こんにちは。編み物の妖精です。
こちらは編み物マニアから初心者さんまで気になりそうな本をピックアップして独断と偏見で紹介するコーナーです。
今回は…
『絵を見て編む ギャルのセーターPART2』
1983年刊 50ページ 500円(当時販売価格)
会社の書庫を眺めることを密かな趣味としているのですが、ある時、このインパクト大な漫画のイラストが表紙が目に飛び込んできました。PART2とありますが、PART1は春夏物でしたので、ニットシーズンにふさわしい秋冬版に注目してみることにしました。
別の記事で取り上げた『アランセーター物語』(85年刊)とほぼ同時期に出しているこの本、それ以降、こういった漫画タイプの編み物本が書庫には見当たらなかったので、逆に貴重と言えるでしょう。物語はおなじみの(?)学園モノ。仲良し3人トリオが彼のためにペアのセーターを編むことを決めます。
「ただのセーターじゃつまらないわね…」
「提案!!ペアのセーターなんてどう?」
「あたしアラン模様の色違いにでもするわ」
なんて相談し合っているのです。もう、編み物界隈の人間からしてみると将来有望な人材にしか見えません。スカウトしたい…。
3人の中の1人、あやちゃんが編み物が得意。彼女が編み物本を貸してくれることで、編み方の紹介につながっていきます。初心者さんのために用意するものやポイントなどを詳しく解説してくれています。
毛糸を一緒に買いに行き、それぞれ編むものも決定(アラン、チルデンベスト、ロピセーター)。クリスマスに間に合わせることを約束するというお約束の展開に。
編んでいることを知った彼からの
「ペアのセーター?いらねーよ。そんなの恥ずかしくて着れるかよ」というオブラートなしの辛辣な意見にも、
「彼がどう言おうとさ、プレゼントするのはこっちなんだから」
「あんたペアやりたくないの?」
「やりたいわよ!!」
と、3人で叱咤激励し合いながらも編み進めていくのです。むしろ編み妄想は加速するばかり。強い。
そんな物語とともに編み方、仕上げ方の解説へと進んでいきます。そして徹夜メンバーを出しながらも全員無事に完成&プレゼント。ちゃんと納期までに完成させるあたり、かなりの技巧派トリオなんじゃないか?と思えてきて、応援したくなってくるんです。
ペアを恥ずかしがり、着ることを渋る彼の1人には…
「ゆかりはね、きのう徹夜で編んだのよ」
「恥ずかしがるなんておかしいわ。このセーターはゆかりの真心なのよ」
としっかり、きっちりと援護射撃。無事にハッピーエンドを迎えるのでした。
50ページの中に3人の編み物青春物語、編み方の説明をギュッと閉じ込めた漫画タイプのこの本。時代性を感じるスタンスや表現も多々あり、それ自体を楽しむのもまた一興。所狭しとレイアウトされた編み図やプロセス(編み方解説)も初心者目線で描かれていてわかりやすいので、編み物本としても十分楽しめます。
タイトルには「ギャルの~」とありますが、時代によってギャルの定義も移りゆくものなのですね。PART3は発行されていないようなので、この本が読めるありがたさを嚙み締めつつページをめくったのでした。