こんにちは。編み物の妖精です。
こちらは編み物マニアから初心者さんまで気になりそうな本をピックアップして独断と偏見で紹介するコーナーです。
今回は…
『海の男たちのセーター』
福 のり子著 1989年刊 オールカラー120ページ 3,500円(当時販売価格)
骨太のセーター本。編み物本編集者の間でも語り継がれている名著です(作り方は掲載していません)。
今なお世界中で編み継がれる、英国伝統ニットの歴史に触れることができる1冊です。
本書ではガンジーセータがメイン。貴重な写真と共に歴史を紐解いていきます。
「ガンジーを語るには海に生きる人々について語らなければならない」
と文中にあるように、セーターを知ることはその人々の生活を知ることなのです。
命がけで漁をする男たちにとって、セーターは身を守るための貴重な防寒具。漁からの帰りを待つ者はそこに願いを編む。
生きていくために必要なものとしてのセーターなのです。重みが違います。そしてその願いと誇りは技術と共に現代に伝わっているのです。
ガンジーセーターは裏目と表目で構成される地模様が特徴で、地方によって模様の種類も様々。模様や意匠に物語があるのです。
そしてニットをまとう男たちの写真。なんと美しく、誇らしげで、自信に満ち溢れていているのでしょう。この写真を追っていくだけでも、本書の価値を知ることができるはずです。
ガンジーのほかにもシェットランド島のニットにまで話は及びます。シェットランドレースから始まり、フェアアイルニットへの転換期など、時代と共にニットも変化していきます。
過去に毛糸だまで取り上げたマーガレット・スチュアートさんのインタビューのほかサンカ手袋やアランニットについても紹介しており、著者の飽くなき探求心と取材力に驚くばかりです。
そう、私たちが今編んでいるニットはここから始まっているのです。
この本のおかげで形は違えど、日本で歴史を受け継ぎ、編めることを誇りに思います。