こんにちは。編み物の妖精です。
こちらは編み物マニアから初心者さんまで気になりそうな本をピックアップして独断と偏見で紹介するコーナーです。
今回は…
『あみもの毛糸いまむかし 日本手編み糸産業史』
松下義弘著 252ページ 1986年刊 1,200円(当時販売価格)
明治時代からこの本が出版された昭和まで、日本の手編み糸産業の変遷を記した貴重な1冊。この本は1983年に繊研新聞に連載されたものをまとめたもののようで、名だたる企業の協力を得て出版されました。
導入の編み物前史から始まり、明治~大正期、日本に編み物文化が婦人会やミッションスクールから徐々に広まっていく様子が書かれています。編み機が生まれたのもこのころ。「荻原式」「S式」の言葉でピンと来た人はかなりのマニアといって良いでしょう。凄い人たちがいたものです。
戦争を経て、徐々に現在の毛糸市場が作られていく様子は特に一読の価値アリ。当たり前ですが毛糸マーケットは日本の紡績産業の動向が関わってきたことを思い知らされます。激動の時代を各メーカーは様々な規制や困難を乗り越え、新しい毛糸を打ち出していくのです。この編み物黎明期から最盛期にかけてはまるで夢物語を見ているようなロマンに溢れているのです。
毛糸をユーザーに届けるにはにはどうしたら良いか。各メーカーは様々なプロモーションやビジネスモデルを作り上げていきます。代理店を作ったり、歌を作ったり、学校や養成所を作ったり、もちろん本を作ったり…。どんどんニーズに応えていくことで編み物の世界は広がっていきます。
さらに派生して各地イベントや教室事業が盛り上がるにつれ、伝統ニットや輸入糸、今までにない技術などにも注目が集まり…と現代につながっていくのです。「いい時代だった」と一言で片づけることができなほどの熱量がそこには記されているのです。
わかるんです。読み進めていくにつれ、過去と現在がしっかりと手を取り、未来につながっていることを。
編み物に関わる人間としてどうしたいか、どうすべきか、ちゃんと歩んでいるのか。自身を振り返るきっかけになりました。