

いまや当たり前になりつつある、編み物に関わる男性にスポットを当てた過去毛糸だまの人気特集をピックアップ!
「2018年毛糸だま秋号」より
皆さんはハンモックを通して世界を見たことがありますか?
今回の編み物男子はハンモックの専門家、みちやまさん。紐から紡いで製作したオリジナルのハンモックを販売・レンタル・設置。各地でイベントも開催しています。
通常のハンモックの大きさ。編みとも織りとも違う技法を使っている
ハンモックに魅せられたのは24歳。高尾山でツリークライミングをした時のことでした。
その1年後、25歳で起業。最初はハンモックを広めたい一心で、リアカーにハンモックを積んで、都内を走り回っていたそうですが、10年めの今は様々な企業と組んで、予想もしないような楽しいハンモックを次々に作り続けています。
アウトドアと相性の良いハンモック。大人も子どもも夢中になる
「例えば、高円寺にあるハンモック美容室。特にシャンプーが気持ちいいんです。今、開発中なのがカフェ用。ドリンクホルダーが差せて、テーブルが出せるハンモックを考えています」
あらゆる角度からハンモックの可能性を探るみちやまさん
そんなハンモックの製作過程を拝見すると、一見、織り機に似ているのですが、織るというよりは編みに近い。
「正確には結うという言い方が的確かもしれません」とみちやまさん。カメラを向けると、カメラ目線で編み続けます。
「集中すると、手元を見なくてもいけます(笑)。編みの研究もしたくて、体のパーツに合わせて編み方を変えてみたいんです。ストレスフリーな宇宙にいけるハンモックができるかなと」


ロマンのある話! 他にこんなアイテムも。
「アパレル企業と組んで、『着られるハンモック』も作りました。ハンモックに乗って、宙に浮いた状態で着ると、体が引っ張られる感じがあって、ハンモックの気持ちがわかるんです(笑)」
ハンモックの気持ち! これまでなかった発想です。製作中のアイディアも遊び心たっぷり。


「透明のテグスで作ったハンモックをホテルに置きたいという依頼があって。スタンドは置いてあるんだけど、ハンモック自体は透明で見えないので、『あの人浮いてない?』っていう風に見えるんです(笑)」
実際に椅子型のハンモックに包まれてみると、なんとも言えず心が開放されます。ストレスの多いオフィスなど、あらゆるところにハンモックの活躍の場があることに気づかされます。
「車椅子など介護の分野からも依頼を受けているんですよ。使う人の気持ちを知りたいので、介護施設で体験させてもらって製作しました」
広げてみると想像以上の伸縮性に誰もが驚く
では、こんな人と組んでみたいという夢は?
「堀内紀子さんの大ファンで、いつか子ども達の遊具など、大きなものを一緒に作らせていただけたら。おこがましいですが、本当に夢です」
起業する前は、ご自身いわく「飽きっぽい性格」で様々な職業に挑戦したそう。ハンモックと出合って何か変わりましたか?


「もう全然変わりましたね。ハンモックの可能性を広げるのが僕の役目だと思っていますし、そう思ってやっていると、人とのつながりも広がってきて。高尾山で最初に乗った時、木の上で一気に開放されて、その時の空気感がとてもよかったんです」
「まったく知らない人同士がハンモックに乗り終わった後、自然と仲良くなれて。考えてみたら、小さい頃、木の上で遊んだりしましたよね。地に足のつかないところでコミュニケートする快適さ。不思議とぽろっと本音が出てしまうみたいな。そういうものを求めていたんだろうなと思います。本当にハンモックと出合えて、人生観が変わりましたね」


どうやら、みちやまさんにとってハンモックはただ楽しいだけではない、自分と社会を結びつける、本当の人生の入口だったようです。最後に、こんな楽しい目標を話してくれました。
イベントでハンモックを展示。さまざまな分野で注目されている
「紐だけで家を作ってみたいんです。バックパックから3畳ぐらいの快適な空間がすぐに作れるような。紐の研究をしたくて、したくて」
バックパックの3畳間! 実現が楽しみです。
プロフィール
みちやま
里山ハンモック代表。元IT企業のエンジニア。24歳の時にハンモックに出合い、その1年後に会社を退職して起業。ハンモック製作を学びながら、さまざまな職業を経験する。現在はハンモック普及のため制作、販売、ワークショップやイベントなどにも積極的に参加している。企業とのコラボレーションも多く、イベント用やアート作品、インテリアとしてのハンモックも提案している。ハンモックの研究のためにメキシコなども訪れ、日々研鑽を重ねる毎日を送る。
里山ハンモック
Instagram @satoyamahammock
photograph Bunsaku Nakagawa
ライター。『日本映画ナビ』『ステージナビ』をはじめ、新聞・雑誌・ウェブサイト・劇場パンフレットなどで、映画・演劇に関するエッセイやインタビューを執筆。ミサワホームのウェブサイトにて「映画の中の家」、高校生に向けたサイトMammo tvにて「映画のある生活」の他数誌にて映画コラム連載中。




