フィットニット・修理技術者のメグヲです。ニット修理を生業にしています。
ニット修理のケースにおいて「そんなつもりじゃなかった…」「こんなことになるなんて…」と、思わずこぼしてしまうようなトラブルが起きることがあります。例えばこちらのケース。腕のニット部分に大きな切れ目ができています。原因はハサミによる切断。購入後、袋から取り出す際に袖まで切ってしまったようです。
幸いなことに、編み目の横方向に大きく切ってしまっただけなので、段数は少ないようです。とはいえ、なかなか大きな切れ目です。
裏側に別布を挟んで、傷口の大きさを確認します。1〜2模様くらいほどいてつなげば、元通りになるかと思われます。しかし、ほどいた分袖は短くなり、模様の数も減ります。そうすると左右で袖の長さ・模様の数がずれてしまうため、今回は両袖ともカットをいれ、プレス処理をすることで元通りの寸法に近づけていきます。
どこまで切れてしまったのか、どこではぎ合わせれば柄が元通りになるかを考えながら、作業を進めていきます。切れ目から2段飛ばしたところに糸が切れているところが…。意図せず切ってしまった場合、このように目立つ傷から少し離れたところが切れている場合が多々あります。
無傷の目を確認しつつ、はぎ合わせる目を出していきます。半分でも糸に傷があったらその目はもうダメです。無理にはぎ合わせたところで、再び切れて穴になるのは時間の問題です。
はぎ合わせ中の写真。ホワイトをはじめとした薄い色のニットは跡が目立ちやすいため、いつも以上に慎重にはぎ合わせます。
無事に修理が終わりました。柄の繋がりも元と全く同じで、違和感なく着れると思います。何はともあれこれで一件落着。
続いてはこちら。
首の後ろに付いているブランドタグを取ろうとしてハサミで切ったところ、身頃まで切ってしまったニットです。同じ経験をしたことがある人は多いのではないでしょうか?私もやったことがあります。4か所にタグのかけらが縫い止められたまま、なおかつ穴が空いています。穴の原因はハサミかリッパーか…。
タグの端を残してカットするはずが、しっかり繋がっていたため身頃も傷つけてしまい、結果穴が空いてしまった…そんなところでしょうか?
確認すると、2か所の糸を切ってしまったようです。さらに、穴と穴の間の目が全て落ちてしまっています。落ちてしまった目は糸が切れていないため、できる限り拾って修理を進めていきたいところです。そして、残っていたダグは触るだけでボロボロと解けてしまうため、全て取り除いてしまうことに。
スッキリしました。
穴の処理はよくある作業ですので、手早く済ませてしまいます。放置時間が長くなると、より状態が悪くなってしまいます。処理完了後、表側から見た状態です。印の下に穴が二つありました。穴の位置が近かったため少し跡になっていますが、この後しっかりアイロンをかけることで跡を消していきます。
邪魔なタグも無くなり、空いてしまった穴も無くなったので、ようやく気持ちよく着ることができるようになりました。こちらも一件落着。
意図せずニットを切ってしまい、穴が空いてしまった場合はぜひとも相談してみてくださいね。何か方法が見つかるかもしれませんよ。
株式会社フィットニット
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㈱フィットニットの修理技術者。東京・高田馬場にあるフィットニットでは、卓越した技術を持つ修理技術者によるニットの修理・補修のほかリメイクなどを専門に受け付けている。元通りになるのは当たり前。着心地を損なうことなく修復することをポリシーとしている。
http://www.fit-knit.com
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