毛糸だま 2012年冬号より
アイリッシュ・クロッシェレースは、アイルランドで始められた立体的なかぎ針編みのレースです。
13世紀から17世紀に盛んに作られたボビンレースやニードルポイントレースのイミテーションレースで、ニードルポイントレースの特徴であった浮彫りのような感じを出す編み方が工夫されました。
起源ははっきりしていませんが、18世紀後半から19世紀にかけて始まったと言われています。
アイルランドの南の地域で編まれるモチーフは大きく荒く、北の地域では小さくて繊細なモチーフが、細い糸で編まれました。その技法はやがてヨーロッパだけではなく、アメリカ、オーストラリアにまで広がりました。
アイリッシュ・クロッシェレースの編み方には、バラやデージー等の花びらを重ねて立体感を出して編む方法と、パディングコード(芯糸)を編みくるんで立体感を出す方法の二通りがあります。
パディングコードは編み糸よりも太い糸を二つ折りや四つ折りにして使います。
モチーフの図案はアイルランドの国花であるシャムロック(三つ葉のクローバー)を始めとして、バラ、百合、あざみ、しだ、つる草等の植物が多く、蝶、とんぼ、またアイルランドの象徴でもあるハープもモチーフになっています。
かぎ針で編むアイリッシュ・クロッシェレースは、数あるレースの技法の中でも比較的親しみやすい技法と言えるのではないでしょうか。