毛糸だまのほか、ヴォーグ学園や多摩美術大学で講師として活躍するニットデザイナーの笠間綾さんが、和装と編み物についてご紹介する新しい連載「和装とニット」。第1回目は和装とニットの関係がテーマです。
現代において、キモノというと「フォーマルな装い」という印象を受けます。しかし半世紀ほど前まで、キモノは「日常着」でもありました。
日常着としてのキモノにニットがどのように取り入れられていたのか。そして、現代においてキモノをデイリーに楽しむためにおすすめのニットをご紹介します。
和装とニット?
和装とニットというと、「和」と「洋」の対極の存在のように感じてしまいますが、大阪万博のあった昭和40年代初期(1965~1970年)頃までは日常着としてのキモノが一般的で、その「キモノ暮らし」の中にはニットがありました。
羽織やショール、セーターを編んでキモノに重ねたり、小物や帯を編んで和装に取り入れたり。実は、キモノとニットはもともと仲良しだったのです。
当時は家庭で編めるような簡単なニットが人気で、家事をするときに羽織ったり(キモノの袖が収まるのでスムーズに家事ができます)、ワンマイルウェアとしてキモノに重ねたりと普段使いされていました。
しかし、次第にキモノは訪問着として晴れ着の役割を担うことの方が多くなり、 カジュアルなニットを和服に重ねて着る需要が減りました。そうしてキモノとニットとの関係には距離ができてしまったのです。
ですが、近年レンタル着物やフリマサイトの登場によりキモノへの心理的なハードルが徐々に下がってきたことで、お出掛け先での思い出づくりはもちろん、日常ファッションとしてもキモノへの関心が高まってきています。
キモノをニットでデイリーに
いま、キモノをファッションとして楽しみたいと感じている人におすすめなのは、洋服で言うワンピースの感覚で気軽に着られる「小紋」です。小紋とは、柄が全体に入った比較的カジュアルなキモノのこと。 この「コモン」という響きは、一般的という意味を持つ英単語「common」 にも通じます。
洋服と同じようにキモノにはいろいろな約束事があり、TPOが定まっています。
キモノを洋服に例えてみると、どのような場面で着られるのかがよく分かります。ハレの日に着る礼装用の訪問着は、イブニングドレスのような格です。レトロ感あふれるアンティーク着物は、味わい深い古着。そして、気軽に着られる小紋は、日常的に着られるドレス(ワンピース)と言えるでしょう。
ワンピースにはいろいろなタイプのものがありますが、それは小紋も同じ。古典柄なら少し改まったり、縞や格子などは粋な感じになったり。活躍の場面が多く、オシャレの自由度が豊富なワンピースのように、小紋もキモノの約束ごとから比較的自由なところで楽しめる、日常着 “real clothes” としての可能性を持っています。
例えば、 ワンピース + ジャケットでキメたいときもあるけれど、ワンピース + ニットでカジュアルダウンして、頑張りすぎないオシャレを楽しみたいときもある。同じように、キモノにもニットなどのカジュアルテイストのアイテムをプラスしてみると、抜け感やこなれ感を演出できますし、気軽にキモノを着られるシーンも広がります。
では、いまの暮らしにちょうどいいキモノ用のニットとはどのようなかんじでしょうか?もしかしたら、洋服と兼用で着られるような工夫ができるといいかもしれない。流行の技法を取り入れた、 エレガントなラインのものも素敵かも... などなど色々考えて、キモノをデイリーに楽しむためのニット羽織のブランド「amuamufuwawa(あむあむふわわ)」を立ち上げました。
このブランドは、モノづくりに必要な各方面のプロフェッショナルが3人、意気投合して18年前にスタートしました。もちろんみんなキモノが大好きで、こんなふうに着るときっと楽しい、そんな場面をたくさん想像しながら活動しています。
羽織に収めるキモノの袖のシワを気にせずにコンパクトにまとめられるような工夫など、こだわりもたくさんつまっています。ぜひ一度ご覧になってみてください。
もちろん、まずはお手持ちのニットでも。和装とニットの組み合わせ、ぜひ試してみてくださいね。
amuamufuwawa あむあむふわわ
Instagram:@amamfwawa
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