私の手仕事の始まりは、植物染めでした。
東京といえども公園や道ばたには、染料になる植物はたくさんあります。それらを採集しつつ、ザクロやビワなどの街路樹も意外に豊富で、植物の名前にも多少は詳しくなりました。
そのうち藍に興味を持ち、ベランダで藍の苗を育てるようになりました。公共施設の小さな庭を借りて、友人と藍染めの会も立ち上げます。畑へ苗を移植した後は、アブラムシと格闘。夏には青々とした立派なタデ藍になりました。
7月の空の下、手を真っ青にしながら会員の母子で生葉染めを楽しみました。生葉の藍は綺麗な水色に染まります。水洗いした布や服を干すと、空色のグラデーションが風に波打ちます。地上にできた小さな青空は、強烈な夏の日差しを和らげてくれました。
ここ2年ほどは忙しくて藍を作っていませんが、藍の種は今も自宅の冷蔵庫で眠っています。東京で育った藍の種は、本場徳島の種と比べると可哀想なほど貧弱だけど、この小さな種で育つ小さな株こそが私にとって意味のあるものなのです。
[毛糸だま 2011年夏 150号掲載]
大物を釣り上げて、ゴキゲンの猫たち。羊毛の海には藍で染めた青も使いました。