こんにちは。編み物の妖精です。
こちらは編み物マニアから初心者さんまで気になりそうな本をピックアップして独断と偏見で紹介するコーナーです。
今回は…
『ゲージ・製図・割り出しがなくても編める 編むたのしさを主眼とした ひとりで習える 編物の本』
岩佐佳子著 1967年刊
1960年代に出版された家庭用編み機「ひとり編み」のための学習書。教室全盛期でありながらひとり学習に主眼をおいており、サブタイトルには
「ゲージ・製図・割り出しがなくても編める」
と自信がうかがえます。これだけ言い切ってくれると、さまざまな理由で教室に通えない人にとってはさぞかし心強い存在だったのではないでしょうか?
「編機の操作さえおぼえれば、だれでも美しい作品が編めます」ともあります。今となっては編み機をどこで学べばよいのかという問題も出てきますよね。当時の家庭における編み機の普及率がうかがえます。
確固たる技術に裏打ちされた技術書でありながら、著者である岩佐佳子さんのメッセージには「楽しむ」ことが記されています。手段にとらわれることなく、多くの人に編み物を楽しんでもらいたいという想いが伝わってきます。
掲載作品は全ジャンル(!)。メンズ、レディス、子どものウエアだけでなくズボン下、靴下、コートにいたるまで、さまざまなアイテムがこれでもかというほど紹介されており、グラビアと呼ばれる写真から編みたいものをピックアップし、編んでいくわけですが…。
作り方のメインとなっているのは数字が羅列された表なのです(後ろの方に通常の作り方も掲載してありますが)。
これは海外の文章パターンに近いものなのでしょう。部分ごとに表で編むべき目数・段数が記されているのです。表パターンとでも呼べばよいのでしょうか?
糸の太さに応じた記載はもちろん、編み方のポイントや模様編みは別ページにちゃんと解説がありますし、理論上、すべてのニットアイテムがこの一冊で網羅できるのです。
編み物本の編集に関わる私にとって、掲載スペースの問題は悩みの種。本著は著者の考え抜かれた表記法を用いることにより、大量の編み方の掲載が可能になっています。目から鱗です。
編み機はダイヤルによってゲージをコントロールできるため、同じクオリティで編むことが難しくないという利点と、著者の編み物に対する想いが詰まった名著でした。