カンカン・ムーサ
サハラ砂漠の南に位置するニジェール川と、その支流バニ川の中州に、金や塩の交易で栄えた古い街、ジェンネがある。
遥か首都バマコより、定員になるまで出発しないバスを乗り継いで、一日がかりでやってきた。
遠く、土漠の果てに忽然と姿を現した土色の街は、小さな城塞都市のような完璧な姿で地面から盛り上がっており、地平線の彼方に憧れの幻を見るかのようだ。
井上輝美
14世紀にメッカ巡礼を果たしたマリ帝国最盛期の王カンカン・ムーサの黄金は、途中訪れたカイロの金相場を大きく揺るがし、ヨーロッパにも影響を与えたほどであった。しかし、その後の反乱や侵略などにより、16世紀にはあえなく衰退してしまう。
わたくしは、栄光の頃より引き継がれてここに残る、世界最大級の泥のモスクを見物に訪れたのであった。

ライタープロフィール / 井上輝美
手芸、お料理本のスタイリスト。『毛糸だま』誌も担当中。趣味は、旅、音楽、手仕事。

ライタープロフィール / 井上輝美
手芸、お料理本のスタイリスト。『毛糸だま』誌も担当中。趣味は、旅、音楽、手仕事。


