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ジャンピング・マン
モードのパワー
ジャンピング・マン
街に戻っても、宴はまだまだ佳境である。
鍵型に、外に向かって開かれた路地に行き当たると、足首に木の実の鈴を取り付けた男性が一人、太鼓に合わせてトランスのように、高速ハイジャンプで踊っている。白塗りの顔や手足はシャーマンのようだ。
手足を大きく動かして数分間激しく踊っては、ドサリと地面に倒れこむ。しばらくするとまた復活し、高速ハイジャンプを繰り返す。
自身のたてる鈴の音で、街の出入り口を清めているのかと思われた。
ジャンピング・マン 井上輝美
モードのパワー
すがすがしく晴れ渡った翌朝。まだ大気の涼やかな気持ちの良い時間に大きく祝砲が轟いた。ジェンネの街はすでに凄い人出である。
バスの窓からは、乗り換え地点近くの小さな集落以外に地平まで、村や家すら見ることが無かったのに。原野をはるばる歩いて来たのだろうか。数箇所の街の入り口や広場は、華やかな装いのグループの人々でいっぱいだった。
歓迎パレードに参加する揃いの衣裳の人々も、遠方から来た美しい民族衣装の人たちも、晴れの装いに工夫を凝らし、なんてお洒落なことだろう。街区はモードのパワーで充満だ。
若者たちはどこでも凄い。伝統的な美しい衣装に合わせてプラスチックの装身具。赤いサングラスやパーマーの日傘、左右で色違いのパンタロン。ドレス・ダウンがドレス・アップ。女の子たちは輝く笑顔。男の子たちは素知らぬ顔。
極彩色のブーブー姿(ブラウス、巻きスカート、ターバンの共布三点セット)のマダムたちは、集まると模様も色も重なって、ジグゾーパズルのピースのように見分けがつかない。
たくさんの虹を映した波の上に丸い笑顔が漂っている。そして元気な声で朗らかに、飲み物を売る、スナックを売る。男性たちは物静か。
モードのパワー 井上輝美

ライタープロフィール / 井上輝美
手芸、お料理本のスタイリスト。『毛糸だま』誌も担当中。趣味は、旅、音楽、手仕事。

ライタープロフィール / 井上輝美
手芸、お料理本のスタイリスト。『毛糸だま』誌も担当中。趣味は、旅、音楽、手仕事。


