文化服装学院は、来月には文化祭を控えています。学院最大のイベントに向けて、普段にも増して活気づいてきていますので、興味のある方はぜひ文化服装学院のホームページをご覧ください。「BUNKA」の今が分かります!
さて、今回はニットデザイン科(以下KD科)2年生の作品を紹介します。
文化服装学院は二期制をとっています。4月から9月中旬までの前期では機械編みで3点の作品を制作。後期となる現在は、棒針編みのセーターを編んでいるところです。
ニットの授業では作品制作だけではなく、それぞれの技法ごとの部分編みも並行して行います。正直ハードなカリキュラムですが、最初の課題作品のプルオーバーを終えると、皆、高い山を登頂したかような達成感が早くもでてきます。
KD科に進級してくる学生のほとんどはニット未経験者。今回はクラスで学び始めて半年の2年生に、KD科を選んだきっかけや作品づくりで心がけていること、将来の目標などを聞いてみました。
小山 桜咲
Instagram:@11sk.oym15
―KD科を選んだきっかけや将来の夢は?
ショーでKD科の先輩方の作品を見て、ニットに対する見方・感覚が変わったことがきっかけのひとつです。入学後に洋裁の基礎を1年間学んでいく中で、自分は細かい手作業が好きで、しかも得意なことが分かり、ニットでもさまざまな作品制作ができる気がして進級しました。将来の夢はまだ明確ではありませんが、これから大きな夢を持てるように今はニットの技術を身につけ、知識を深めていきたいです。
―作品作りで心がけていること・意識していること
一見シンプルでも、よく見ると個性的な部分・クセのあるデザインになるように心がけています。また、配色は彩度高めで、印象に残りやすいような組み合わせにするようにしています。
プルオーバー、スカート(ともに機械編み)
「シンプルだから際立つ個性」をテーマに、プルオーバーとタイトスカートには波型のかぎ針編みのラインを、フレアスカートにはぽこぽこと立体感の出る引き上げ編みをアクセントに取り入れました。年間を通してスポーティな作品をつくりたかったので、いずれも彩度高めの色でアクティブな印象になるような配色にしています。
森 愛葉
Instagram:@moriaiha @hello.moriaiha_knitwork
―KD科を選んだきっかけや将来の夢は?
もともとYouTubeを見ながらかぎ針編みに触れていました。もっと、きちんとニットのことを学びたい!ニットで作品がつくりたい!と思い、進級しました。将来の方向性はまだ決まっていませんが、編むこと、それを誰かに届けることはもちろん、写真を撮ることやアートディレクターにも興味があります。とにかく、やりたいことがたくさんあります!
―作品作りで心がけていること・意識していること
私は色が好きです。その好きな色たちを大切にしながら作品を作っています。また、課題の作品撮りまでを含めてようやく作品が完成すると私は思っています。作品撮り・写真は他の人に作品を伝える事ができる手段だと思います。
―これからニットで作ってみたいもの
今つくってみたいニット作品は、新聞や雑誌。紙よりも、すごくおもしろい雑誌ができそうです!
プルオーバー、スカート (ともに機械編み)
ネットには仮面を被った人たちがいる。盗撮は普通で。常識から踏み外すと、一斉に叩かれる。だから目立たないいい子になる。それを1人のお姫様に例えた。本当はいろんなことがしたい姫。けれど国民からの視線がある。だから自分のなりたい姿を隠す。あなたの理想のお姫様はいない……。この作品撮りは姫の憧れる架空の世界。姫がコラージュしたノートの1ページ。
スカート (機械編み)
テーマは「海に眠る宝物をさがしにいきましょう」。このスカートは色を楽しんだスカート。つくっていてすごく楽しかった。たくさんの色の刺繍糸を混ぜて、キラキラの糸を混ぜて。絵の具のように編めるニット。新しい色を見つけられるニット。
森 悠里花
Instagram:@yurik.amo
―KD科を選んだきっかけや将来の夢は?
それまで編み物はしたことがなく未経験でしたが、以前よりテキスタイルを自分でデザインできるニットに魅力を感じていました。KD科に入ってからは、自分で毛糸の種類やゲージを組み合わせ、さまざまな編み地がつくれるようになりました。同じ糸でも人によって編む力加減等で変わり、それだけで表情の異なる編み地ができあがります。さらに、模様編みは自分の発想次第でオリジナルの模様を展開することもでき、ニットのテキスタイルにとても可能性を感じています。また布帛と違い一本の繋がった糸からできているので、リサイクルしやすいことも、これからの時代、もっと注目を浴びるべき技術ではないかと考えています。
憧れのニットブランドで働くことや、ゆくゆくは自分のブランドを立ち上げることなど、目標はたくさんありますが、最終的には北欧やヨーロッパのニット大国で働いてみたいと思い描いています。そこでしか習得できない技術はもちろん、逆をいえば、学生時代の今、文化服装学院でしか学べないことがたくさんあると思っているので、その技術を現地で活かせないかと思っています。今はまだまだ、ひたすら編み物に向き合って勉強しなくてはいけませんが、自分の強みを見つけていきたいです。
―作品作りで心がけていること・意識していること
自分の見たものや何かに触れた思い出などをデザインに反映することが多いです。特に自然や生き物が好きなので、それを編み地や形で表現することを意識しています。旅行先で撮った山や海の写真にある配色を取り入れ、図書館にある動植物の図鑑を参考にすることもあります。
―これからニットで作ってみたいもの・やってみたいこと
アラン模様のニット作品を編んでみたいです。アランニットは凹凸のはっきりとしたケーブル模様が美しいニットで、発祥の地であるアラン諸島ではそれぞれの家庭で独自の柄があり、着ているセーターがその人の素性を証明していたそうです。私も自分の編むニットの模様に、意味や想いを込めながら編んでみたいと思っています。
スカート(機械編み)
テーマは “finfish” 。「人魚の夢をみる 何処までも泳げる力と いつまでも唄える心と 魚に触れる様なしなやかな指 心の一部をうるおして みなもに浮かぶ銀の月まで こんなにも自由に泳いでいける 悲しくも楽しくも いつしか人は海へ還るもの」
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KD科では一つの課題に対し、制作レポートも一緒に提出してもらいます(もちろん作品撮りも各自がんばります)。作図や編み図、計算、素材についての他、市場調査や自由研究も添付されています。各自の自由研究では、学生が興味を持っているブランドなどを取り上げていて、こちらも読んでいて興味深いです。
アラン模様に興味を持っている森 悠里花さんはスカートのレポートの中で、毛糸だまでも取り上げられているニット作家・yuna(Instagram:@newaran_yuna)さんによるニットブランド「NEW ARAN(ニューアラン)」のことをレポートで取り上げていました。実はyunaさんもKD科で学んだひとり。今後のご活躍を期待するとともに、後輩たちへニットの可能性や刺激をどんどん与えてほしいと思っています。
学生たちは少しでも編めるようになると、友人の帽子を編んでみたり、フリマで作品を売ったりと、数か月前では考えられないくらいニットに親しんで、(あくまでも本人次第ですが)自在に編めるようになります。またKD科には布帛を扱うドレーピングの授業もあるため、気がつけばニットも布帛も両方つかえるようになっています。
上達の進度やスピードは人それぞれ。ニットは毎日の積み重ねがあって、でもなかなか上手に編めなくて。でも、常に編まないことにはスピードもつかないし、始まらない。
試行錯誤を繰り返し、自分を納得させながら編んでいくと、ある日突然、編めるようになった自分と出会えるはず。その時の達成感と嬉しさは格別です。
そんな気持ちを学生には味わってほしいと思っています。
文化服装学院
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