白い月
客室は主人の居室の向い側の庭角に一つ。まだ赤い色をした、日干しレンガの新しい建物である。覗いてみると、レンガ壁で仕切られた二間続きとなっており、土間には寝床として広げられた新しい藁がふわふわと気持ち良さそうだ。
ほかの男性の泊り客と同宿で、という大らかさであったが、使用人の少年たちは庭の大樹の下で眠るのだそうで、わたくしはむしろそちらのグループに入れてもらおうと思う。バマコで買った、ワニ模様の泥染めの布が役に立つだろう。
二人組の、旅の音楽家も庭に投宿しており、暗闇の街角でのライブの後、大樹の下、バラフォンの演奏付きという風雅な運びとなった。
月はしずしずと姿を現し、そろそろと夢の粉をふりそそぐ。
静かな音を立てて回転する半球の星空の下。蜘蛛の糸で織り上げた柔らかい月光のシーツに包まって、葉影の下の眠りの国へ、ゆっくりとみんなで降りていく。
白い月 井上輝美

ライタープロフィール / 井上輝美
手芸、お料理本のスタイリスト。『毛糸だま』誌も担当中。趣味は、旅、音楽、手仕事。

ライタープロフィール / 井上輝美
手芸、お料理本のスタイリスト。『毛糸だま』誌も担当中。趣味は、旅、音楽、手仕事。


