[毛糸だま 2012年春号掲載]
「人形をつくるとき、下絵は描くの?」と、よく聞かれます。
それは“ある程度絵が描けるはず”という期待が含まれるのでしょう。が、残念!私はまったくダメ。描けません (講座を受講されている方は、つたない板書をよーくご存知のはずです) 。
頭の中には映画のワンシーンを切り取ったようなビジョンがあるのですが、そこから先はとにかく、作るしかない…。
ほとんどの人形は、私の意図しなかった形になっていきます。作業机に目をやれば現実は当初の思いとはほど遠く、ぼんやりとした残像を追いかけるように、ただただ羊毛を握りしめるのです。
今回のドラゴンの場合は、(1)指は三本(2)体は寒色系(3)耳はつけない、という条件だけを考えてから制作開始。作っていれば自然と羊毛の中に目や鼻が見えてきます。
我が家に遊びに来た小学生が「今日は恐竜つくってるんだー」とチラリと見たので「(違うけど)うん、まあね」と生返事。三つの条件を見れば確かに、出現するのは恐竜であったかもしれませんので。
ドラゴンの鱗用にウール布を染めるのも、一枚ずつ付けていくのも、とても楽しい作業です。