[毛糸だま 2012年秋号掲載]
その昔、昭和のころのこと。喫茶店で食べたナポリタンや舌が緑色になるクリームソーダは、ごちそうしてくれた大人の優しい笑顔とセットで脳に深く刻まれました。
その店の前を通るたびに「次はいつ連れて行ってくれるのだろう」と切なくじっと見つめた子ども時代。
大人になってフランスへ行くと、驚くことばかりでした。素敵なパリジェンヌたちが歩きながらバゲットをかじり、当然のように歩道にせり出すカフェ・テーブル。店内はガラガラでも、外は満席。自分とお店を隔てるガラス窓は無い。
ウキウキと入って、いただいたケーキの美しかったこと。どっしりと甘く、重くて大きなフランスの味で“違和感”を噛みしめました。
平成の今はいろんなカフェに、いつでも入ることができるけど、あの頃に入りたかった「ガラス窓の向こう」の店とは違っています。
私の中の憧れのカフェ文化は、なかなか大人になることができずにいます。
大人用のままごと道具を一式揃えるようなつもりで作りました。ギャルソン犬の背丈は24cmあります。