羊毛倉庫の「作りたい」という気持ち

人形の記憶

公開日 2024.03.09 ライター=羊毛倉庫

コラム
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羊毛倉庫
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[毛糸だま 2013年春号掲載]


保育園のころの話です。小さな私はちっぽけな人形をいつも手に持っていて、大勢の園児達の中でぽつんと過ごしていました。


園庭の対面式ブランコで遊んでいるときでした。あっというまに10人ほどが乗り込み、猛スピードで激しくこぎ出しました。揺れに耐えきれず、落とした人形を無理に拾おうとして、私の小指は縫うほどのケガに。


慌てる大人達に人形の行方を聞いても叶わず、何日も一人で園庭を探していました。この出来事は、私と人形との最初の歴史でもありました。


「それで、人形はみつかったの?」 昔話を聞かされていた息子は私に問います。見つからなかったの…と答えた私の目をじっと見つめて、「おかあさん、かわいそう、かわいそう」 と息子は手を握りました。


こんなことって、あるんだな。小さな心の塊が解ける瞬間。小指のつけ根の傷跡は、この先きっと私の生きる支えとなってくれるはずでしょう。


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背景の鳥には5種類の白い羊毛を使いました。白はとても深い色ですね 。

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ライタープロフィール / 羊毛倉庫
鈴木千晶の人形作家名。東京校を中心に、横浜校、名古屋校、心斎橋校、さらには天神校でも講座を持つヴォーグ学園の人気講師。
https://twitter.com/evicall
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鈴木千晶の人形作家名。東京校を中心に、横浜校、名古屋校、心斎橋校、さらには天神校でも講座を持つヴォーグ学園の人気講師。
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