[毛糸だま 2015年秋号掲載]
私は最近、とても頑なです。
歳とともに体の関節も頭も固いこの頃なので、そうそう簡単には感動はしません。
でも日々に無感動というわけではなく、涙腺なんかは緩みっぱなしなので、どちらかというと“好きなものだけに頑な”なのです。
美術館や本や街角でふいに目にすると、いつも呼吸が止まりそうになるのは歌川国芳。腕前はご存じの通りなので、多くの美術館で収蔵・常設されていることもあり、浮世絵の図録はもちろん、猫の絵の雑貨まで店頭に並びます。
なんだたかが江戸の浮世絵師じゃないか、とはどうぞ茶々を入れずに願います。現代にいたるまで絵師は数あれど、彼ほど庶民と同じ目線から見たカッコイイ世界を描けるイラストレーターがいるのでしょうか?
滝や波の音、煙の臭い、動いているような錯覚を誘う武者たち。彼の描く人間は、私たちと同じ重力の下で生きている気がします。
彼の絵はいつも私をざわざわと動かします。私だって、こんな力のある人形を作りたい。結局はそんな欲望に行き着くわけですが…。
作業服を来たイノシシなので、なんとなく山を歩く父の姿を思いながら作りました 。