[毛糸だま 2016年秋号掲載]
夏が苦手な私は、毎年7月になるのを恐れ、9月を心待ちにしています。
8月さえ終われば…。あの迫ってくるような空気の重い夏空やせいろの中のような熱気から少しずつ逃れられるはず。
でも、おかしいな。10代の頃はあの炎天下で1日中部活に励んでいたし、働き始めた20代の夏は、毎週末を海で過ごしていたはずです。木陰から腕を伸ばして見上げた入道雲は、秋の空よりも高く遠くにありました。
思えば30代、子育て中の真夏の公園通いが苦行の始まりだったかもしれません。まだらに焼けた自分たちの顔を他のママさんたちと笑いあうのはいいけれど、秋がくる頃にはホッとして体力が尽きてしまいました。
そして今が40代。地球の気温が昔より上昇しているのは事実としても、それ以上に秋は楽しい。銀杏の葉は黄色く舞い、実はオレンジに、もみじも桜の葉も赤く燃える。空気が澄み、高音域の音が冴える気温になる頃、夫の誕生日がやってくる。
次に子どもの誕生日とクリスマス、そして年が明ければ私もまた一つ歳を取る。今年も私は秋への期待の扉を、アチコチで探しては開くのです。
『ポーの一族』へのオマージュで作りました。少女漫画の世界観は美しすぎて難しい!