[毛糸だま 2016年冬号掲載]
ふた昔ほど前、ペットショップで働いたことがありました。
生来犬や猫が大好きなうえに、田舎育ちで虫も平気。勤めのおかげで変温動物も扱えるようになって、もう無敵!
抱いて撫でるようなペットと違い、ヘビやトカゲは住環境の世話をして観察するだけ。そのうち触っても怒らなくなるかもね、という程度。魚に至ってはもはや絵画を育てるような世界でした。
生き物は隔てなくそれぞれの力と美しさがあって可愛いけれど、目一杯広げた両腕でかき集めるように世話をする命は、どうしてもこぼれ落ちてしまいます。それはまるで無知な鎖のようでした。
自分の家族ができてから、私は『生きもの係』に再び任命されます。
まずは子ども。この育ち盛りのホモ・サピエンスは、私に次々と飼育生物を連れ帰ってきました。幼虫、バッタ、カマキリ、カブト、クワガタ、大量のザリガニ。そしてドジョウに金魚にカニ、仕上げは甲羅の欠けたカメ。
小さな腕でも責任を持てば、命の鎖は縁の交わりに変化するかもしれません。
「社会人になったら、あなたが飼いなさいよ」と何度も息子に言いながら、私は八年目のカメの顔を眺めています。
豚の3兄弟は頑丈なレンガのお家でクリスマスを過ごします。来年は無事な一年になりますように。