編み物男子

「有望すぎる中学生」大竹邦和さん 

公開日 2023.01.23 更新日 2023.08.10
ライター=多賀谷浩子

コラム
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多賀谷浩子
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いまや当たり前になりつつある、編み物に関わる男性にスポットを当てた過去毛糸だまの人気特集をピックアップ!

「2021年毛糸だま春号」より


今回の編み物男子は、現在中学3年生の大竹邦和さん。シュタイナー系の学校に通っていて、小学校1年生から必須科目として編み物の授業を受けてきたそうです。


画像7自然体で取材に応じてくれた邦和さん 


「1年生の時に、絵描き歌みたいな『作り目の歌』を教わるんです。羊がどうして…とか、そういう歌詞なんですけど、歌いながら作り目ができるようになっていて。同じように『伏せ目』ができる歌もあるんです。自分たちで使う道具は自分たちの手で作るのが学校の方針なので、棒針も1年生の時に削って作るんですよ」


画像1青い糸を好んで使う邦和さん
画像2棒針は授業で自作したというから驚きです


お手製の棒針で最初に編んだのが、コロイという笛を入れる縦長のケース。初めてといいますが、なかなかの仕上がりです。


「最初に編んだ時は、すごく編み物が好きってわけじゃなかったと思うんだけど、やり始めたら楽しくて。おじいちゃんが毛糸で有名な地域に住んでいるので、いっぱい送ってくれて。おばあちゃんが方眼紙に実物大の編み図を書いてくれて、それを当てながら編んでいました。『ここまで編んだら、お母さんに聞いて、減らし目をしてもらって』と書いてあって、一段編むごとに○と×を編み図に書き込みながら…」


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そんな方法とおじいさまの糸で編んだのが、きれいなブルーのベスト。小学1年生頃の作品ですが、今は小1の妹さんが着ているというから素敵。


画像8小学校1年生の時に編んだベスト。今は妹さんが着ている


その後も学校の課題でさまざまな作品を編んできた邦和さん。中でも、取材スタッフを騒然とさせたのが、ニットで編まれた機関車の模型!この精巧さ…想像を超えています。


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「中学の最後に発表する課題で何を作ろうか考えていた時に、機関車系の何かがいいけれど、編み物もやりたいし、どっちにしようかなと迷っていたら、母がRavelry(ラベリー)でこれを見つけて。戦前、世界最速だったフライング・スコッツマンという機関車がモデルだと思うんですけど、イギリスの方が編み図をフリー素材として公開していたので、英文を1行ずつ読みながら編んでいきました」


画像10制作物はいくつも同時進行で進めるという


もともと電車が好きで、Nゲージのジオラマにも憧れるそう。けれど、自分の部屋にそこまでスペースは取れない。ならば「編み物とNゲージを合体させればいいんだ!」という発想に至ったというから、なんと斬新なアイデア。


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画像6かぎ針で編んだお化け。ゲージ調整によって大きさを調整している


「中に厚紙を入れて、長方形みたいに編んで、切れ込みを入れて機関車の形にしていくんです。驚くのが、棒針で編むように指定されていること。タイヤも棒針なんですよ。でも、なぜかタイヤの上のチェーンと連結のチェーンはかぎ針編みで指定されているんです(笑)」


画像11小物から始まり最近はセーターに挑戦している


もうひとつ、編集スタッフを驚かせた大作が、やはり学校の自由課題で制作したという巨大なラグのようなもの。シャドーニッティングで、見る角度によって巨大な機関車が浮かび上がる作りは、ちょっと感動すらおぼえます。


画像12圧巻のSLをモチーフにしたシャドーニッティング。全長は約3m!自分の部屋に飾るスペースがなく、今回久々に広げることができた


「120センチの輪針で行ったり来たりしながら編みました。学校の課題なので、スーツケースに入れてゴロゴロ引いて学校に持っていったら、友だちから『どこ行くの?』って言われて(笑)。最後の方は編むのが重たかったです」


画像13シャドーニッティングの編み図


この若さにして、この大作。先程のニットの機関車は、実際に走らせる構想もあったそう。


「アイロンをあてると溶けて固まる糸を購入するまではしたんですが、機関車の図面を引くところでどうしようとなって。走るとなると、もっと大きくしないといけないし。電気にも興味があるので、ライトを光らせることができたらいいなとか、いろいろ考えています」


機関車ニットが走り出す日も、そう遠くはないのかもしれません。4月からは高校生。今後の邦和さんからどんな作品が生まれるのか、ワクワクしながら注目したいと思います。


画像14授業で作った革靴。革も黒く染めている。普通に履けてしまう完成度


プロフィール

大竹邦和:おおたけくにちか

幼少時から手仕事ができる環境に育つ。シュタイナー教育実践校に小学部より通い1年時から編み物を授業で習得。特に青い色の毛糸を好んで編み、今ではクリスマスプレゼントに編み物道具を所望するほどに。工作・手芸全般、電子工作も得意としている。趣味はピアノとNゲージ(特に蒸気機関車)。現在はブリオッシュ編みのスヌード、次作にアランセーターを予定している。


photograph Bunsaku Nakagawa

多賀谷浩子
ライタープロフィール / 多賀谷浩子
ライター。『日本映画ナビ』『ステージナビ』をはじめ、新聞・雑誌・ウェブサイト・劇場パンフレットなどで、映画・演劇に関するエッセイやインタビューを執筆。ミサワホームのウェブサイトにて「映画の中の家」、高校生に向けたサイトMammo tvにて「映画のある生活」の他数誌にて映画コラム連載中。
多賀谷浩子
ライタープロフィール / 多賀谷浩子
ライター。『日本映画ナビ』『ステージナビ』をはじめ、新聞・雑誌・ウェブサイト・劇場パンフレットなどで、映画・演劇に関するエッセイやインタビューを執筆。ミサワホームのウェブサイトにて「映画の中の家」、高校生に向けたサイトMammo tvにて「映画のある生活」の他数誌にて映画コラム連載中。
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