[毛糸だま 2018年春号掲載]
この言葉を初めて知った時、“まるで忍者の呪文みたい”と思いました。「イシンデンシン!」と目を閉じて呟けば、相手に思いが飛んでいくような。
そういえば高校生の頃に飼っていたワンコは、夜更けに旅先から帰って来た私をバス停で待っていたことがありました。ちぎれそうに尻尾を振って、三日ぶりに会う私めがけて飛び込んできたのです。
なぜそこで待てば主人が帰ってくるとわかったのかは、今も謎のまま。 とても利口な野良犬が懐いてしまった流れで、ワンコは基本放し飼い。散歩に行くよ!と誘っても、たいがいワンコはその道程でフッと山の中に消えて行ってしまいます。
あの子はいったいどこで何をしているの?暗い夕景に消えていく足音を耳で追いつつも、犬の自由な世界に憧れさえ憶えました。
今回作ったのは、最近お邪魔したお宅にいたポメラニアン。完全に室内飼いだけれど、その小さな体にも確かに違う世界が存在するのを感じました。言葉は要らないけれど、すべてが伝わるわけではないのよね。その確固たる世界を、人は眩しく仰ぎ見るのです。
毛の植毛に浅草橋Keitoのシェットランドヤーン2plyを5色使いました。色が豊富できれい!
(※編集部追記:現在はKeitoの実店舗は閉店し、オンラインショップを中心に、イベントへの出店などを行っています。)