今回のゲストは、シンディ・ヨシエダさん。幼い頃から、こたつカバーのうな大きなものを編んでは、完成するとほどいて、また編んでいたという生粋の編み物ラバーです。
「東京に出た時も毛糸が買えればぐらいの気持ちで。自由でいたくて、定職につかない〝プー太郎〞希望でした(笑)。そのうちテレビ番組の着ぐるみを作る会社と縁がありまして」
フリーになった今も、着ぐるみの仕事が生活の中心になっています。
「ニット作品やブライスなど着せ替え人形の洋服も販売していまして、私の作品をよく買ってくれた方が『中野手芸部』というお店のオーナーで、店長をやってみない?と。
10年からお店がなくなるまで店長をしていました。昨年1年間、新宿2丁目のバーで月に1回〝編み物バー〞を。編み物って健全なイメージですが、そこからちょっとはみ出すニッターさんも普通にいて、そういう人たちが面白がって来てくれました」
たまたま、そのバーに飲みに行き、オーナーと話をする中で、月イチ店長をやってみない?となったそう。
「何をしている人なのか聞かれて、当時からフィンランドのヘヴィメタル編み物選手権に出場していたので、その話をしたら、面白がってくれて」
こちらはヨエンスーという町の町おこしで、地元のヘヴィメタルバンドの課題曲に合わせ、何かを編むパフォーマンスを披露する選手権。19年から毎年、決勝に進出しています。
「元を辿ると、顔見知りのライブハウスのイベントで、何かやってみない?と言われて、有名なアンプの〝マーシャル〞ならぬ〝アマーシャル〞というアンプ型編み機を考えて〝編み語り〞芸をしまして。
曲に合わせて頭を振りながら編むと、アマーシャルから編んだものが出てくるんです(笑)。それで、ヘヴィメタ編み物をネットで発見して、音楽とニットの融合だし、参加すべきかなと冗談でリツイートしたら、やってみれば?という声が予想以上に集まって。応募だけでもしてみる?って」
他にもネットの声に押されて盛り上がっているのがウミウシ作り。
「図鑑に載っているウミウシを1日1匹編んで、おかげさまで999匹になりました。編まないの? って言ってもらわなかったらサボっていたかも」
シンディさんの活動、振り返ると、すべてが「やってみない?」の声に全力で応えてきた結果。そのアウトプットはお笑い芸人のような面白さ。
「あ、お笑いが一番すばらしいと思っているんですよ。そうですね、ひたすらフリに乗っかっていますね(笑)」
それは乗っかれるだけの技術があるから。ウミウシも自宅兼アトリエを見守るオオトカゲも、編み図を作らずに編みながら曲げたいところを調整していくそうで、関節や指先のリアリティなど見事な造形力。
「トカゲは、あみぐるみを始めた時に、くまちゃんやうさぎちゃんではないものが作りたいと思いまして」編み物の多様性。ニットのイメージからは遠そうなものが編み物と融合していく楽しさ。編み物ってもっと自由なんだと気づかせてくれます。
シンディ・ヨシエダさん
東京都在住。「アミモノでなんでも作る」手芸術家。よしえだ製作所としても活動中。ソーイングから企業の受注作品、ウミウシまで編みこなす自由人。中野手芸部の運営やシンディ・ヨシエダ名義での編み語りライブ、ヘヴィメタル編み物選手権の出場など型にとらわれない活動からコアなファンを集めている。編むという行為自体を愛し、夢は実家を編みくるむこと。
http://yoshieda-seisakujyo.com(よしえだ製作所)