『九重編造花法 松の巻』寺西緑子著より(明治40年)
近代日本の手芸を研究している北川ケイと申します。
ここでは明治期、ハイカラさんの間で流行した編造花を再現するとともに作り方のポイントを紹介していきます。
今回は私の所蔵する明治40年発行、寺西緑子著『九重編造花法 松の巻』に掲載されている山茶花(サザンカ)について。
さざんか さざんか さいたみち
たきびだ たきびだ おちばたき
あたろうか あたろうよ
しもやけおててが もうかゆい
童謡「たき火」の歌詞でもお馴染みの山茶花です。
山茶花は、中国の椿一般を指す山茶に由来します。本来の読み方である「さんさか」が訛ったようです。椿のように首からぽとりとは落ちず、花弁がはらはらと散る花です。春先に発生するチャクドク蛾の毛虫によって皮膚がかぶれるので庭師さんが苦手な木でもあります。そのため、昔のような生垣もあまり見かけません。
慌ただしい12月に咲く花のため、あまり気づかずに過ごしている昨今ですが、花言葉が素敵なのに驚きました。「困難に打ち勝つ、ひたむきな愛、理想の恋」と寒さのなかを、一途に咲くからだそうです。そして、ピンクの山茶花は、「永遠の愛」なのです。
【材料と道具】
絹レース糸生成り、針金#26・28緑、絹穴糸/緑、フラワーチューブ、にかわ・のり
レース針6号、糸切はさみ、水彩絵の具ヴィジリアングリーン・レモンイエロー・ブローン・紅、毛筆
【編み方】
大葉:◇作り目鎖18目◇帽子編(細編)1目編む◇長編を次第に長く3目編む◇二重絡みの長編(長々編)も次第に長く、中膨れにして次第に短くなるように編む◇最後の3目から次第に短くなるように長編◇最後は帽子編。◇鎖3目◇逆目(ぎゃくめ:裏を取る)にして、前の最後の帽子編のところに帽子編◇針金(#26)を抱き込み前の片側のように編む◇最後の目は帽子編と捨目(引き抜き)で止める◇大葉は1枚。
小葉:鎖15目にする1枚。
花弁:(イ)◇作り目鎖25目◇長編を次第に長く10目編む◇11目より二重絡みの長編(長々編)も次第に長く、中膨れにして編む◇最後の目に長編3目入れる◇針金(#28)を抱き込み前の片側のように編む◇最後の目は帽子編と捨目(引き抜き)で止める◇同様にして5枚。
蕚:◇作り目鎖7目◇丸くして始めの目に帽子編にて止める◇1目に2目帽子編を入れる◇一巡りする◇鎖3目拵える◇逆目を取り長編1目◇1目抜かす◇次の目に抜き出しにて止める◇次の目に帽子編◇鎖3目を拵えて同様に繰り返す◇1個。
染色:◇葉、蕚はヴィジリアングリーン、レモンイエロー、ブローンの混合色◇花弁は紅色を薄めた汁を、花弁の下方から6分まで浸す。乾くと曙色に染まる。◇乾いたら膠に浸して乾かす。
組立:◇大葉の編み余り糸と針金を、5分(1.5㎝)巻き下がる◇小葉も同様
◇糸房にした匂(花芯)を針金#26中心にして花弁5枚を周囲に添えて巻き糸で一寸(3センチ)巻き下がる◇蕚に抜きとおす。◇1寸巻き糸で巻き下がる。開花1輪できる。◇護謨管(フラワーチューブ)で仕上げる。