今回のゲストは伝統柄のセーターがSNSでも好評の凪さん。
素敵なお名前は本名。お母さんが「落ち着いた子になるように」とつけてくれたそう。その願いどおり、26歳という年齢よりも落ち着いた印象なのは、ニットに限らず、いろいろな趣味がオーセンティックだからでしょうか。
「そんないいものじゃないです(笑)。ただ、服を買う前に、その服のディテールを調べたりするのは好きです」
服のディテール?
「例えば、Leeっていうデニムのブランドがありますよね。Leeのジージャンのボタンは、前身頃は金属ですが、後ろはプラスチックなんです。理由を調べたら、馬に乗った時に傷つけないため。ちゃんと理由があってディテールができているのが面白いなと」
探求肌は洋服のみならず、カルチャー全般に及ぶよう。例えば、好きなバンドができると、そのルーツを辿っていくそうで、50年代ロックの話も通じてしまう。源流の本物に辿り着いてきた凪さんが伝統柄に惹かれるのは、必然だったのかもしれません。
すでに何枚も編み上げていますが、実はなんと編み物歴9カ月。
「もともとファッションが大好きで、古着屋でセーターを買ったんです。それがジャミーソンズのシェットランドセーターで、メイド・イン・イングランドって書いてあったので、これはいいセーターやろうと思って(笑)
いろいろ調べていったら、ウィンザー公やポール・マッカートニーも着ている伝統的なセーターだったんですよ。それで、ますます好きになって。多分、それがセーターを好きになったきっかけです」
その後の探求スピードが驚異的。
「アランセーターやロピセーター、伝統のニットを現地から輸入したんです。でも、コルソナスセーターは見つからなかったので、自分で編み始めたのですが、かぎ針も使うとわかって、マジかって(笑)。かぎ針の練習も、すじ編みも大変でした」
アランもロピも他のセーターも、輸入しては編むをくり返します。
「アランセーターは家紋みたいなクラン(模様)がありますが、デザインが一番かわいくて、名前が似ているマギーを選びました(笑)」
そもそもニットに惹かれたのは、
「例えば、アラフォス・ロピというアイスランドの毛糸だと、毛の作りが粗かったりしませんか。すごく太い部分もあれば、細い部分もあって、干し草が入ったままだったりして。
そういう手作り感というか、整いすぎない、ちょっと雑な感じが好きなんです。毛糸もそういう手作りの感じが欲しくて、自分で紡いでみようと思ったんです」
セーターとの出合いであるシェットランドセーターを編み上げるというのが、編み始めた当初の目標。それを達成した今、今度は初任給で買った紡ぎ車で糸紡ぎ修行に入る予定。
「ファッション全般好きですが、編み物はアナログで全行程をできるところに惹かれます。編むのも紡ぎも始めたばかりなので、がんばります」
いろいろな本物に触れてきた凪さんがどんな糸を紡ぐのか。これからの活動が楽しみです。
凪:なぎ さん
神戸出身。東京都在住。音楽とファッションを愛する会社員。古着を好み、そこで伝統ニットの魅力に触れる。アメリカ留学中に出合ったフィンランドのコルソナスセーターを皮切りに短期間で次々と伝統ニットを独学で編む。「自分の紡いだ糸で編んでみたい」と現在手紡ぎ修行中。バイクやアウトドアも好き。
Instagram:nagis_knits