井上輝美の刺繍放浪記

サンブラスの小道Ⅰ【パナマ共和国】

公開日 2024.08.08 ライター=井上輝美

コラム
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井上輝美
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パナマ共和国サンブラス諸島へ


西アフリカの次は、カリブ海に浮かぶサンブラス諸島での体験記です。先住民、クナ族の人びとの暮らす、モラという美しい布で有名なところです。同じく東京での仕事の合間を縫って1988年、年末年始の旅でした。地球温暖化と言われるより以前のことですが、あまりに小さな島々に暮らす人びとの居ることに驚いたことでした。


ホテル・アナイⅠ


眼下のジャングルは、粉のような光をまとって、白昼とろとろと居眠りをしている。


パナマ・シテイから、8人乗りの小型機で斜めにジャングルをよぎると間もなく大西洋。懐かしのカリブ海が見えてきた。砂浜に寄せるレースのような白波が海の青さを際立たせ、青色は外海に向かってぐんぐんと明るいアクアマリンへと変わっていく。快晴。風は穏やか。


ヨットや小船がちらほらと、銀糸の走る水面にアクセントを添える。


海底の白砂が山脈のように連なって、まるで月光が射しているかのような透明な海。


「サンブラス空港の向かい側に、ホテル・アナイというのがあるからね」と、中南米の民芸品に携わっている友人に薦められてやってきた。


東京ライフは忙しい。しばし仕事をオフにして、孤島でぼんやり過ごしたい。テラスでモヒートを飲みながら、幸せな孤独に浸るのだ。そんな夢想を愉しむ暇もなく、1時間ほどでベージュの砂の小さな島が近づいてきた。


赤や緑の、有名な民族衣装の女性たち子供たちが大勢、プロペラ機を見上げて大きく手を振りながら駆けてくる。なんて可愛いらしい人たちなんだろう。


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井上輝美
ライタープロフィール / 井上輝美
手芸、お料理本のスタイリスト。『毛糸だま』誌も担当中。趣味は、旅、音楽、手仕事。
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手芸、お料理本のスタイリスト。『毛糸だま』誌も担当中。趣味は、旅、音楽、手仕事。
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