ホテル・アナイⅡ
いよいよ目指す孤島にやって来た。
しかし、上空から見るまろやかな L 字形をしたこの小島には、丈の高い椰子の木がぱらぱらと呑気に生えているばかり。
エア会社のオフィスらしき平屋の建物以外には何も見当たらない。ホテル・アナイが無いではないか。
そう思う間にも小さなプロペラ機は、U字型にカーブした滑走路に軽やかに着陸し、海に突っ込みそうだという所で曲がり切り、兎にかく無事に停止した。
人形のような人たちが、微笑みながら集まってくる。
家族を迎えに来たのだろうか、ハチドリの羽音のような話し声がわたくしの周りを取り囲む。
はたして、ホテル・アナイはいずこに?
傍にいる男性に尋ねるとその人は、言葉もなく荷物を手に取って、砂地を海に向かって導くように歩き始めた。
100メートルも行かぬ間に、簡単に板を渡しただけの小さな桟橋があった。
彼はエンジン付きのカヌーで向かいの小島に渡してくれ、あっけなく元の空港の島へと戻っていく。
ホテル・アナイ( 友情) はそこにあった。確かに友の言う通り、空港の向かい側には相違ない。
サンブラスとは、椰子の木一本だけ、家屋が一軒だけの極小島すらある360余りの島々の総称で、人々はカヌーを使って海を自在に行き来していた。
ここでは道は海上にあるのだった。