井上輝美の刺繍放浪記

サンブラスの小道Ⅺ【パナマからバハマへ】

公開日 2025.03.19 ライター=井上輝美

コラム
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井上輝美
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マイアミ国際エアポート


パナマ・シティからのフライトで立ち寄ったマイアミ国際空港は、西海岸の玄関口、ロサンゼルス空港をしのぐ異次元の巨大さだった。


南北アメリカ大陸やヨーロッパなどから押し寄せてくる幾多の人の大波で、イミグレーションは大混雑の大行列。


とても大きな庇が特徴的な帽子、ソンブレロ姿で赤ん坊を抱いたメキシコ人家族の後につき、やっとの思いでトランジットの入管手続きを終え、外に出る。


10時間後にバハマへ発つ予約便を確かめておこうと航空会社のカウンターに行ってみると、何やら調べていた窓口の人からは「1時の便があるので、12時半までにE1ゲートへ行ってください」とのアナウンス!


「ええっ!? 午後1時ですか? すぐですよね!?」


「はい、そうです。体重は何キロですか?」


体重を訊くからには、小さな飛行機に空席が見つかったに違いない。出発だ。


そのままチェックインして、バハマのエルスエラ島へ飛ぶ展開となった。


元々のプランでは待ち時間を利用して、マイアミ市内のリトル・ハバナ地区に、キューバ音楽を聴きに行くつもりだった。


残念だけれど、明るいうちのフライトとは実際にはありがたい。


キューバ音楽の耳鳴りを遠くに聴きながら、サルサのクイック・ステップであたふたと『E1ゲート』を目指す。


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ルート案内に沿ってしばらく行ったところ、突き当たりの壁に大きな扉が並んでいる。エレベーターに乗る指示だと思い待っていると扉が開き、何とそれは電車なのだった。


空港内に電車が走っているとは初めてのことである。座席は最小限に少なく、スーツケースのスペースを配慮した自動運転の車両だった。


その後もスカイ・トレインという名もスマートに路線を増やし、益々活躍中であると聞く。


さて、時間を気にしながら脇目も振らずたどり着いたE1ゲートは、一番はずれの誰もいないような、ガランとした建物だった。


フライト案内の表示もなく、外に出てみると滑走路も一番はじっこのささやかな一画である。


6人乗り位のセスナ機がポツンと一機、わたくしの来るのを待ちうけていた。別荘に行くと思しき軽装の、リラックスした雰囲気の3人家族が同乗者らしき様子で佇んでいる。


マダムはソレイヤードのコットン・プリントのワンピース。金の貝殻のイヤリング、パールの入ったネックレス。カジュアルだけどシックな装いが洒落ている。


ケネディ一族みたいなバミューダ・パンツ、アイビー・ルックが若々しいロマンスグレーのお父さん。


スラリとした長身に、白でまとめたリゾート・ウエアがスマートな妙齢の娘さん。


とても素敵なご家族である。

井上輝美
ライタープロフィール / 井上輝美
手芸、お料理本のスタイリスト。『毛糸だま』誌も担当中。趣味は、旅、音楽、手仕事。
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手芸、お料理本のスタイリスト。『毛糸だま』誌も担当中。趣味は、旅、音楽、手仕事。
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