毛糸だま 2012年秋号より
ボビンレースはボビンに巻いた糸を組み合わせて構成するレースです。古くは3世紀頃のものと思われる糸を巻いたボビンが、エジプトでコプト人の墓陵から発見されています。
パスマンと呼ばれるブレードレースから技法が始まり、13世紀にはフランスで商売として成立していました。15世紀にはピロー(枕形のレース台)が発明され、ベルギー、フランスなどで組まれるようになりました。
当時は糸を切らずに長く組み続ける方法でしたが、17世紀には途中で糸を切る技法が考えられ、より自由で独創性に富んだ作品が作られました。手で組むレースは時間がかかり高価なため「糸の宝石」と呼ばれることもあります。19世紀になり、機械レースが発明され大量に生産されるようになると、庶民にも手が届くようになりました。
ボビンの組み方は地域によって違い、フランス、ベルギーなどではクッサン(平台)で糸を巻いたボビンをころがす様に組みますが、ドイツ、チェコなどではピローでボビンを握り込んで組みます。
2012年5月16日から6月3日まで、ドイツ中央西部のフリッツラーの郷土博物館で「針の会」のレース展示会を開催しました。レースの伝統のある国で、(公財)日本手芸普及協会レース部門での技術が受け入れられるかどうか評価が気になりましたが、好評でほっとしました。ドイツでは、レースの町として有名なアンナベルク・ブッフホルツにも行きました。この町にはレースのコンクールがあり、今も新しいパターンが生まれ続けています。公民館ではボビンレースの基礎を学んでいる子供達と出会い、伝統を残すことの意義を見たような気がしました。