毛糸だま 2013年秋号より
タティングレースは結びの手芸で、1本の糸を芯にして、シャトルに巻いた糸でこの芯糸に結び目を連続して作るレースです。初めはコードやしぼって輪にした結びリングを別々に作り、布に縫い付けて装飾として使っていました。
しぼった輪の形が目を思わせるので、イタリアでは目を意味する「Occhi」として知られています。また、フランス語からとった「Frivolite」(価値のない編み物)という言い方もありますが、それは表面的な装飾品にすぎないものということでしょう。
1850年イギリス人のリエゴ夫人が編みながら針を使ってリングとリングをピコットでつなぐ方法を考案しました。さらに1864年には2個のシャトルを使ったブリッジの作り方を発表し、デザインの多様性が急激に広まりました。
1つの結び目から生まれる清楚で優雅なレースは、エレガントな手芸と言われ、18~19世紀に女性貴族の間で大変もてはやされ、教養として習うものだったそうです。
日本には明治初めに他の西洋文化と共に伝わり、大正から昭和初期には穴糸でショール、袋物などがさかんに作られ、女学校の教材としても取り入れられて大流行しました。
シャトルという小さな一つの道具で作るタティングレースは、場所をとらず、何時でもどこでも手軽にでき、数少ない基本さえ覚えれば自由に変化のある図案を編み出せる「自由レース」と呼びたいものです。