『九重編造花法 松の巻』寺西緑子著より(明治40年)
近代日本の手芸を研究している北川ケイと申します。
ここでは明治期、ハイカラさんの間で流行した編造花を再現するとともに作り方のポイントを紹介していきます。
今回は私の所蔵する明治40年発行、寺西緑子著『九重編造花法 松の巻』に掲載されている松竹梅(ショウチクバイ)のうち、梅をご紹介します。
前編をまだお読みでない方はこちらから。
寒い地域では、梅の開花は春を告げる重要な花で、こぎん挿し、菱刺しの意匠に使われています。おめでたい花でもありますね。
湯河原では毎年2月中旬ごろに幕山公園の梅園が見頃となります。幕山一面を覆う梅園は、甘い香りに包まれて壮大な風景となります。一度は壮観な梅園を観にいらして、春を感じてみてください。
梅
【材料と道具】
白絹レース糸・レース針4~6号・針金#26・水彩絵の具・膠・大和のり・絹穴糸・フラワーチューブ・ペップ
【編み方】
開花:作り目鎖5目◇丸くする◇初めの目に帽子編(細編み)で止める◇鎖二つを編む◇丸くした輪の中に長編み20目入れる◇初めの鎖2目の上部の目に帽子編で止める◇一目隔てた目に長編み15目入れる◇また一目隔た目に帽子編で止める◇順次に五弁を編みつけて一輪となる。
半開:作り目鎖5目◇開花の場合と同様にする◇輪の中に長編み12目を入れ、周囲に三弁を編みつける◇半開一輪を終わる。
大蕾:作り目鎖2目◇初めの目に長編み8目◇同じ目に抜出しにて止め終わる◇二つ作る。
小蕾:作り目鎖5目◇これを丸くする◇帽子編(細編み)で止めて鎖2目◇輪の中に長編み6目◇裏返す◇初めの鎖の上部に抜出す◇捨目(引き抜き)で止める◇二つ作る。
萼(がく):作り目鎖5目◇これを丸くして初めの目に帽子編(細編み)で止める◇鎖2目◇次の目に帽子編で止める◇5回繰り返して止める◇六つ作る。
【染め方】
白、紅梅いずれも好し。淡色にして、その乾いてから花弁の表より凹に豆饅で押し出す。最も真の梅花に異なることなし。
萼は「ブラウン」と「ビオレット」を混和した染汁で染める。
【組み立て方】
梅:編み糸にて匂(ペップ)を作る◇開花の中央に抜き通す◇これを萼の中にその糸端を引き出す◇半開も開花同様にする◇大蕾は、編んだ物を表合わせにして、編み余りの糸を全部萼の中に通しておく◇小蕾は、編み余りの糸を萼の中に通しおく◇次に針金の先を巻き糸で巻く◇順次図のごとく花を取り付け、二枝を作る。
以上、図に対照して、程よく配添し、松竹梅全体の組み立てを終わる。