[毛糸だま 2018年夏号掲載]
有名な絵本「かいじゅうたちのいるところ」の作者、モーリス・センダック。彼はこの本に出てくるかいじゅうのモデルを “子どもの頃に会った親戚のおばさんたちだ” と語っていました。
確かに人の年輪を感じる顔をしたモンスターたちです。逸話となったおばさま方には災難な話だけれど、小さな人たちにとって大人とは、大きくて不条理な壁のような存在。迫ってくる怖さと不思議さはよく理解できます。
息子が小さかった頃、友だちから幽霊話を聞かされたり図書館で恐い話を読んでしまったりすると、夜はすがるように私にしがみついて寝ながら言いました。
―すごく恐いけど、どうしても見ちゃうんだ―
まあ、そうだろうね。私も身に覚えがあるよと返しつつ、布団の中ではまだ残っている家事のことばかりが気がかりで…。
子どもと大人は、こうしてくり返すのですね。息子が大きくなって自分の子どもを得れば、同じ会話がまた営々と続けられるのでしょう。それとも恐い話をつい読んでしまうのは、大人に立ち向かいつつ乗り越えていくためなのでしょうか?
北斎が描いた河童をモデルにしました。意外にも。体はシルクで覆われています。