

アイスクリーム・ストリート
ミントブルーの海と大きな椰子の木々を背景に、光を浴びた緑地には白い民家が点在し、自然素材の家屋だったサンブラス諸島とは全く異なった景色である。
こじんまりした家々の庭先には不釣り合いに大きな、直径2m はありそうな、白いパラボラ・アンテナがしばしば設置されていて、なんだか不思議な光景。ウェス・アンダーソンの映画や、SFアニメを見るようだ。
タクシーの窓に、小さな街区が現れた。
空色やピンクやラベンダーの、ペンキを塗ったばかりのように綺麗な二階建ての官庁やオフィスが、椰子やハイビスカス、ブーゲンビリアを庭木にして、ドール・ハウスのように可愛いらしく並んでいる。
映画『バック・ツー・ザ・フィーチャー』のような、ちょっとノスタルジックな街並みが意外でもあり、また愉しくもあり。
官庁と思しき建物には、黒、黄、青の鮮やかなバハマ・トリコロールの国旗が掲げられ、独立国の誇りさながら大きく風にたなびいて、高い空へと溶けて行く。
小国ながら観光とタックスヘイブン政策(免税) により、外国の企業や銀行からも人気上々の国なのだ。
アイスクリーム・カラーの町をあっという間に走り抜け、ロックサウンズ 空港からは1マイル(1.6km ) だというコテージ・ホテルに到着した。
椰子の木々に囲まれた、ハイビスカスの花咲く広々とした芝生に白いコテージが3・4棟、距離を置いてゆったりと並んでいる。
芝生からは椰子の向こうにハンモックと海が見えており、ブラボー! ビーチへとつながっているみたい。
早く確かめようとタクシーを降りていると、母屋の入り口から大柄でチャーミングな老婦人が現れた。
「あらまあ!ちっちゃな子が来たよ!荷物はないの?」と、出迎え早々大きな笑顔の呆れ声である。
一目で好きになったその人は、宿の主人エドウイナだった。
「ピンクが大好きなのよ」と、誘れたレセプション・ルームは、花柄のクロスやコサージュで素敵にコーディネートされており、あちこちにハイビスカスも飾られて、彼女のお茶会に招かれたよう。
カーテンごしの陽射しも柔らかに、目まぐるしかった移動の緊張も、ほっとほぐれていく心地である。
宿泊手続きを済ませ、コテージで使う電気ポットやテイーセットのトレイ、ラジオ、りんごなどなどを受け取ると、「空腹ならば何か作るけど、リクエストある?」という、早速の提案にびっくり。
気さくな心遣いもありがたい、アットホームに和めそうな『エドウイナズ・プレイス』だった。
手芸、お料理本のスタイリスト。『毛糸だま』誌も担当中。趣味は、旅、音楽、手仕事。




