今回のゲストは、株式会社みんなのニット共和国のBANさんこと伴真太郎さん。
製作・販売しているラグは、いろいろな糸からできていて、独特の風合い。実はこれ、糸メーカーがアパレル企業に配る「ブック」と呼ばれるサンプルの編み地を再利用しているのです。
「イタリア糸の輸入代理店にいたのですが、ハイブランドが採用するような上質の糸のブックが廃棄になるのがもったいないなとずっと思っていて」
そこで起業。特徴的なのはブックの編み地を手作業で解ほどいていること。
「上質なウールは繊維が長いので、機械で裁断すると繊維ごと切れてチクチクしてしまうんです。でも、ひとりでやるには限界がある。じゃあ、誰にお願いしようと思っていたところに、障害者施設で働いている友人からたまたま連絡があって、見に行ったら、想像していた以上にたくさんの仕事をされていて。糸を解く職人さんの仕事をこの施設でやってもらったらいいかもしれないと思ったんです」
そこから2年間、施設の職員として働きながら、全国各地の障害者施設を見学して回ります。
「障害のある方と働くってどんな感じなんだろうとか、障害といってもいろいろな状況があるので、メンタルの障害の方には糸巻器で巻く作業をお願いしようとか、生活介護が必要な方には短い糸を結んで1本の糸にする作業をお願いしようとか」
結果として、「みんなのニット共和国」という形が誕生します。
「職人さんを探していたことが、結果的に障害のある方の支援につながりましたが、廃材を提供しているという企業のCSR(社会的責任)への取り組みにもなるし、皆にとってよいことになれば。サーキュラーエコノミーを実現するという思いを込めて、この企業名にしたんです。今、環境問題の要因として、アパレルが批判を受けるところがありますが、僕もアパレル側から育っていったので、批判よりも共和国にしたいなと」
株式会社であることも大事。
「NPOだと収益性より公益性になって、世の中に広がりにくい。例えば、ドイツだと障害者施設は企業になっていて、商品を売る人も買う人も税制が優遇されている。世の中に広がる仕組みができているんです」そもそも伴さんは文化服装学院のニットデザイン科出身。
「テキスタイルデザイン科の先輩の展示がかっこよくて、布地作りからトータルでできる服作りに惹かれて、テキスタイル科に進もうとしたら、その先輩が親切で、来年からカリキュラムが変わることを教えてくれて。どうしようと思っていたら、今度はニット科の面白い先生と出会って、ニットは染めも編みもトータルでできるという話を聞いて」
ニット科卒業後は2年間、バックパッカーの旅へ。これからも海外に触れていたいという思いを胸にアパレルに就職。そこで取引先のイタリア糸の輸入代理店からスカウトされ、現在に至ります。わらしべ長者のような伴さんのこれまで。これからの旅もどう発展するのか、楽しみです。
BAN:ばん(伴 真太郎)
東京都在住。文化服装学院ニットデザイン科卒。廃棄されるニットをリメイクし一点モノを作る活動をする㈱みんなのニット共和国代表・デザイナー。アパレル企業と福祉施設を繋ぎ廃棄物を再利用した商品の製造と販売を行っている。文化服装学院講師。BONUSTRACKタフティング部部長。
Instagram:ukniti