蝦夷菊(エゾギク)
『九重編造花法 松の巻』寺西緑子著 明治40年
近代日本の手芸を研究している北川ケイと申します。
ここでは明治期、ハイカラさんの間で流行した編造花を再現するとともに、作り方のポイントを紹介していきます。
今回は私の所蔵する明治40年発行、寺西緑子著『九重編造花法 松の巻』に掲載されている蝦夷菊(エゾギク)について。
蝦夷菊って何?と思われる方は多いのではないでしょうか。洋名アスターです。
蝦夷(アイヌや北海道の古称)地方でよく育つことに由来しているそうです。18世紀、原産地は中国。面白いことに、そこからフランスに渡りアメリカを経由して日本に渡ってきたのです。江戸時代に改良が進み佛花として好まれたようです。
ちなみにアトリエのある湯河原の庭園に、売れ残りの白い苗を植えました(なぜか、湯河原は白い花が売れ残ります。暖かい場所なだけに明るい色が好まれるようです)。咲き始めた初夏の頃、庭園をお洒落に、華やかに彩ってくれました。
九重編造花も花籠盛りにすると、蝦夷菊の魅力が引き立ちますから不思議ちゃんの花です。
【材料と道具】白絹レース糸・レース鈎針4~6号・針金#26・水彩絵の具・膠・大和のり・絹穴糸・フラワーチューブ・ペップ
【編み方】
葉:作り目鎖25目◇帽子編(細編)1目編む◇長編を5目編む◇そこに鎖3目◇長編みの上部の横に帽子編みで止める◇長編み4目◇鎖3目◇始めの帽子編みに帽子編みで止める◇針金を入れる◇同様の編み方で逆に編む◇最後の目を帽子編して捨て目(引き抜き編)にする。3枚
弁:鎖23目◇逆目を取る◇端一つを帽子編み◇針金を入れる◇長編みで最終まで編み行く◇捨て目にて一弁を終わる◇同様のもの35本
蕾:白糸で作り目鎖5目◇丸くして帽子編みで止める◇輪に長編み13目◇丸くして最初の鎖2目の上に帽子編みで止める◇青糸で二目おきに2目長編み◇一回り◇帽子編で2段編む◇5目おきに1目減◇二回り◇2目おきに1目減◇最後に2目位にする◇抜出(引き抜き編)で止める
萼:鎖8目◇丸くし◇帽子編で1目に2目入れる◇一廻りする◇帽子編み◇一廻り◇鎖二目◇帽子編みにて止める◇鎖二目◇一廻り◇最終は捨て目して終わる。
【染め方】
葉:百合同様なり。参照。
花:種類多数あが、その一例を示す。
紫色「ビオレット」の一種を余り、濃色にならないように染める。蕾の上部又同じ
【組み立て方】
35枚の弁を一枚づつ、巻き糸にて堅く絡み◇これを萼の中央に抜き通す◇巻き糸にて一寸(3センチ)ばかり巻き下り◇その所にて一葉を附添し◇三分(1センチ)ばかり巻き下り◇次の一葉を附添し◇尚一寸ばかり巻き下り◇開花の一枝を作るなり。
そして匂を開花の中心に糊着する◇真の匂の様に作る◇蕾に針金を添える◇巻き糸にて八分(2.5センチ)ばかり巻き下る◇一葉を附添する◇又一寸五分ばかり巻き下り◇これに開花の一枝を同時に堅くからみ付け止め置く◇図の如きものになる