

私の英文パターン歴
アメリカ・サンフランシスコで現地のアメリカ人に編み物を教えて20年になるハヤシチアキです。
これまでのコラムでは、アメリカ⼈でも迷⼦になってしまう、わりと細かい注意点について書いてきましたが、今回はもうちょっと⼤きな全体像から、どんな時に多くの⼈が英⽂パターンで迷⼦になってしまうのかをお話しようと思います。
まずは、英⽂の⽂章パターンの歴史(?)を紐解くことから始めましょう。
私が英⽂パターンを書き始めたのは、20 年以上も前。その当時は紙の枚数(プリント枚数)を抑えることがとても⼤切でした。Ravelry (ラベリー)が誕⽣したのが2007 年。それまでは、パターンといったら紙に印刷されているものをショップで購⼊、もしくは郵送(!)の時代でした。
となると、いかに少ないページ数に全てを押し込むのかが腕の⾒せどころ。省略できるところは、できるだけ省略するというのが鉄則でした。
写真は、年代のかなり古いパターンで、もっと紙が貴重だった時代。⾏間も無く細かい字でぎっしり…。
細かい字で行間もほとんどない1980年代の総柄アランのセーターのパターン。模様の編み図も全くありません!
信じてもらえないかもしれませんが、この⽂章パターンは、総アランのセーターです。
模様の編み図も全くありません。はっきり⾔って、このパターンから総柄アランのセーターを完成させるのは、まるでジグゾーパズルをしているようなものです。うまくピースが収まったら拍⼿です!
それに⽐べ、最近のパターンはデジタルで購⼊することがほとんどなので、昔に⽐べて枚数も多くなり、読みやすい=編みやすいものが多くなりました。
テクニックについてのリンクも貼ってあったりと、この⼗年でものすごい変化です。逆に枚数が多すぎてプリントしてから、しまったと思うこともありますが。
迷子にならないために
前置きが⻑くなりましたが、それでは、英⽂パターンを選ぶときに迷⼦にならないためのヒントをお伝えしたいと思います。私の⽣徒さんがもっとも悪戦苦闘するパターンは、 ʻEASYʼ 簡単と書いてある、枚数の少ないパターンです。
⽇本の編み図なら、ちょっとした編み⽅ポイントが記載されている1・2 ページでセーターが編めてしまいますが、英⽂の⽂章パターンでは、最低でも3・4枚は必要になります。それがペラペラの1枚だったとしたら、そこではかなりの量の情報が省略されているということなのです。
簡単そうに⾒えるシンプルな枚数の少ないパターン、実はʻ簡単ʼではないのです!特に厄介なのは、カーディガンの前⾒頃をボトムアップで、左⾒頃と右⾒頃の2枚を編む時です。
編み図なら全体像を⾒て、どこで減し⽬をするのか⼀⽬瞭然ですが、⽂章パターンではそうもいきません。多くの場合、ʻAt the same timeʼ と注意書きがあり、衿ぐりと袖ぐりの減⽬を違うタイミングで正確に同時進⾏する必要があります。
このʻAt the same timeʼは多くの⼈が困ってしまう英⽂パターンではかなり曲者の表現なのですが、この既にわかりにくい作業が、なんと反対側の前⾝頃を編むときに、たった⼀⾏だけで、“Reverse from other side.” 「反転させて編む」と、簡単(!)に記載されていることがあるのです。こうなると、まず100%近い⼈がお⼿上げです。
”At the same time”で、すでに頭がこんがらがってしまっている⼈に、反転させて編むなんてことは不可能に近いのです。
ʻEASYʼのパターンで迷⼦になってしまっている⽣徒さんには最初に「ここでわからなくなってしまうのは、あなたのせいではないのよ。パターンが省略されているから悪いのよ」と伝えます。
すると皆ホッとした表情になります。その後は表を作って、どこでどんな減らし⽬をするのかを確認していきます。反転させると、右上2⽬⼀度と左上2⽬⼀度が反対側に出てくること、伏せ⽬では段が1 段ずれることも説明します。
ʻEASY’のパターンで⾃信をなくしていた⽣徒さんも、「こんなのわかるわけないじゃない!」と、明るい顔でレッスンを終了することができます。
生徒さんが楽しく編み物を進められるよう和やかな雰囲気のレッスンを心がけています
今⽇のまとめ
ʻEASYʼと謳っている、極端に枚数の少ないパターンには要注意です!フリーパターンも簡略化されたものが多くあります。⽂章パターンはデザイナーによって表現もいろいろです。⾃分のお気に⼊りのデザイナーのパターンを⾒つけることができれば、ストレスフリーで、編み物を楽しむことができますね!
Ravelry:chiaki-hayashi
Instagram (英語):chiakiknit
Instagram (日本語):chiakiknit_jpn
Youtube:@ChiakiHayashi-ow7oe
ニットデザイナー。武蔵野美術大学卒。グラフィックデザイン、プレスの仕事を経た後、渡米。2004年にChiaki Knitを立ち上げる。200近いオリジナルの英文パターンをウェブサイト、Ravelry で発表。デザインワークの傍ら、サンフランシスコ、ベイアリアのニットショップで、20年以上に渡りアメリカ人に編み物を教えている。2009年から2014年まで『毛糸だま』で「ブルーバードの編み物クラブ」を連載。2024年から、日本語訳パターンの販売をRavelryでスタート。夫と保護犬パインコーンの3人でサンフランシスコの郊外暮らし
http://www.chiakiknit.com/



