井上輝美の刺繍放浪記

ラピス・ラズリXVI【マザリシャリフ・アフガニスタン】

公開日 2026.10.22 ライター=井上輝美

コラム
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井上輝美
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宝石箱


聖堂の、丈高く麗しい大扉をくぐり抜けると、ブルーのタイルに覆われて冷んやりとした、水中に居るかのような美しい部屋である。 背後の高窓からの光が、水面に反射する陽光さながら、頭上に明るくたゆたっている。


いざ、内陣へと次の扉を開けると、静かな薄明かりのコンコースには思いもかけず、女性専用の参拝ルートが早々に示されていた!


本堂へと向かう正面を左に外れ、アブドルおじさん達とは別々の礼拝である。


「インシャッラー(神の思し召しのままに)、また後でね」


幾つもの青い部屋が連なった内陣沿いの通路を、淡い光に誘われながら、一人泳ぐように進んでいく。


壁面のタイルには、一枚ずつ小さな花々の文様が丁寧に描かれており、壮大で圧倒的な外観に比べると、たいそう可憐な雰囲気が意外である。


ネックレスの恋唄のことを思うと、たとえ礼拝場所は分かれていても、女性への配慮はちゃんと成されているのかもしれない。 変化していく自然光を追って、静謐で神秘的なタイル絵の庭をたどっていく。


ふと通路の奥へと目を凝らすと、切り絵のように連なった、キリコの絵を思わせるアーチの回廊が見えてきた。なにやら内庭があるらしい。


そばまで来ると、柱周りの黒い影を額縁にして、美しくドラマチックな情景が静かにわたくしを待ち受けていた。


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光を100倍にも増幅させる大きな内壁を背景にして、豊かな色彩の衣装もゆったりと、女性や子供たちが三々五々、中庭の大理石の床に端座して、穏やかにお祈りをしているのだった。


オペラの舞台さながら、ルネサンス絵画を3Dで観ているような、居合わせているのが非現実的な心持ちとなり、呆然と立ち尽くして見惚れるばかり。


しばらくして我に帰ったわたくしは、内陣沿いの通路をもう少し奥へと探検してみたけれど、大聖堂の中へと続く入口は見つからず、生涯忘れ得ない情景を観るにとどまる次第となった。


1512年に創建されたブルーモスクは、『宝石箱のよう』と、よく形容されるのだけれど、数十年も前の訪問だったとはいえ、その壮麗さを感得できた幸運に、心からの感謝の気持ち捧げます。


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井上輝美
ライタープロフィール / 井上輝美
手芸、お料理本のスタイリスト。『毛糸だま』誌も担当中。趣味は、旅、音楽、手仕事。
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手芸、お料理本のスタイリスト。『毛糸だま』誌も担当中。趣味は、旅、音楽、手仕事。
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