薔薇の園
たくさんの、まあるい乳房のような土のドーム屋根が旅人の心に優しい、街道筋の町、タシュクルガンを通り過ぎ、ブルーモスクで名高い国一番の観光地、マザリシャリフを目指す。
最終目的地のバルフは、その郊外である。時折すれ違う、絵画帳のようなトラックと青空以外に色彩はなく、見渡す限り乾き切った、白く眩しい荒野をいく。
はるか地平の彼方、行く手の空に突如白雲の湧き立つがごとし。おびただしい数の白い鳥が、珠になったりほぐれたりしながら、旋回を繰り返しているのが見えてきた。
その下にはモスクと久々の街路が段々と姿を現し、白光の中ぐんぐんと近づいて来る。 マザリシャリフだ。
ロータリーのような中央広場まで来ると、紺碧の空より青く麗しいモスクが堂々と、咲き誇る赤い薔薇の花園を前に光を纏って輝いていた。
ささやかながら花園があるとは驚異的で、人々の想いの深さが偲ばれる。 一輪の薔薇でさえ、あり得ないほどの乾燥地帯なのだから。
中央アジア全体からも、宗派を超えて尊崇されているイスラムの指導者、ハズラット・アリを祀る霊廟ブルーモスク。 つとに有名な、巡礼の聖地である。
いつもはジョークを絶やさない、我らがアブドル・ハッタも今日こそは、礼拝用の白いレース帽を被り、白いシャツに着替えて、腕に留まった白鳩を見つめながら、子どものように神妙な面持ちで固まっている。
広々と、タイルで覆われた前庭から仰ぎ見るブルーモスクは、想像をはるかに越える豪壮さと緻密さで圧巻である。豊かなアーチの開口部を持つ大小の立方体がリズミカルに組み合わされ、上部にはタシュクルガンと同じく、まあるくふくらんだブルータイルの大屋根が幾つも軽々と乗せられている。
壁面を覆い尽くす、さまざまな形のタイルには、精緻な幾何学模様や植物模様などがぎっしりと描き込まれており、尽きることの無いバリエーションに息を呑むばかり。
一体どれほど大規模な工房や窯場があったことか!
間近で見ると、その緑がかったベースの青はガラス質が分厚くて、一枚ずつ、さまざまな深い湖をのぞきこむかのようだ。 無限の物語で覆われた偉大なモスク。
わたくしにも、内部を見学させて頂けるということで、スカーフで頭を包み靴を脱ぎ、いそいそと、アブドルおじさんの後に従い、着いて行く。
金色の星々が高々と輝く、青きドーム天井の入り口は、霊廟とは思えない華麗さでアラビアン・ナイトさながら、未知の物語につながる、美しき魅惑の扉そのものだった。
手芸、お料理本のスタイリスト。『毛糸だま』誌も担当中。趣味は、旅、音楽、手仕事。
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