玉虫色のチョウパン
翌朝の大空は大雨のち大晴天。大平原が集めた雨水はゆるい傾斜をたどり、低地は大河となり、翌日になっても勢いは全く衰えない。光を跳ね返しながら行く手を塞ぎ、滔々と流れていく。
一夜の仲間たちや土地の人にも解決策を相談し、結局は車だけ迂回路をとる運びとなった。旅人たちは、最寄りの峠越えの小道を歩く、という幸せに恵まれる。
運命を共にしている、オーストラリアからの朗らかな女学生二人組とも連れだって、途中の農家からロバを借りうけたりしながら三々五々、山里の間道をおしゃべりしながら歩いていく。
小さな水たまりが朝日に輝いて気持ちよく、若木の雑木林に縁取られた山道が珍しい。
ゆるい傾斜の谷間を挟んだ向こう側の丘にも、陽に照らされた小さな集落が、木々の狭間に見え隠れしている。一軒の新しそうな木造家屋の周辺には、斜面に添って苗木が点々と植えられており、幸せな未来が見えてくるような、平和で可愛らしい村の景色だ。
しばらく行く内に、明るい木漏れ日の行手の先に、玉虫色の縦縞のチョウパン(ガウンのような長衣) を羽織った人が、小さく視界に入って見えてきた。 鷹揚に、しゃがんだり、立ち上がったりを繰り返している。何かを拾っているのかと思いながら近くまで来ると、彫りの深い、白い髭をたくわえた、東方の三賢人のような立派な風貌の老人である。
不釣り合いなシルクの美しい衣装のまま、彼は手ですくった道ばたの泥でペタペタと、自宅の土塀を補修しているのだった!
邪魔にならぬ様すれ違いながら口々に、『アッサラーマレイコム。(平安でありますように)』と、笑顔で朝のご挨拶。陽が差せば強く、泥はすぐに固まってセメントのようになる。
少ない雨だが降って傷めば、またペタペタすればよい。どうということもなさそうなのだった。
分業化が発達し、なんでも他人まかせが当たり前の今日、自分でできる面白いこともまた、同時に失っているのかもしれない。
チョウパンの着こなし術
ダンデイで有名だった、元アフガニスタン大統領のカルザイ氏の例でも見られるように、チョウパンの長い袖は腕を通さずに、英国式ローブのように肩に羽織るのがフォーマルだ。
神聖な色とされている緑と、精神や空を象徴する青色との組み合わせ縞が主流。日常では普通に袖を通して暮らしている人も多く、伊達男たち定番のおしゃれアイテムなのである。
手芸、お料理本のスタイリスト。『毛糸だま』誌も担当中。趣味は、旅、音楽、手仕事。
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