編み物好きのみなさんに、さまざまな切り口で世界の興味深い糸を紹介する本連載。今回は機械系エンジニアが開発した、Gauge Dye Worksのセルフ・ストライピング毛糸をご紹介します。
<毛糸だま 2017年春号より>
近頃見かけるようになった靴下糸には、シンプルなメリヤス編みで、編み込み風やストライプの模様が出てくるようにあらかじめプリントされているものがあります。
このような糸は「セルフ・ストライピング」、「セルフ・パターニング」と呼ばれますが、これを手染めで作り出す個人のダイヤー達がいます。きれいなストライプに色が移り変わるように染めるのは、普通に染めるよりも手間がかかります。しかし靴下は、大体の直径が決まっている筒形の編み物なので、インディーダイヤーにも比較的可能なことでした。
才媛が紡ぐ糸
今回ご紹介するGauge Dye Works は、そのようなセルフ・ストライピング糸を、筒形の靴下でなく、三角形のショールのために作り出した驚くべきインディーダイヤーです。
キャサリン・ガムロスは、もともと機械工学を学び、建築設計事務所や水道局の工学上の設備管理業務の仕事を経た後、ブリティッシュコロンビア大学院に戻り、さらにコンピュータサイエンスの学位を取った才媛です。彼女は大学院生時代に編み物に目覚め、すっかり夢中になりました。この情熱が、もともといつかは自分で何か起業したいと考えていたこととつながったのです。
ヤーン・マシン
最初に染めを始めたころから、彼女の関心は一般的な手染めにはなく、糸を一定のパターンに染め出すことにありました。みずからの機械工学の専門を生かし、糸を計算どおりに効果的に染めることができる「ヤーン・マシン」ともいうべきものを、彼女は独自に設計開発しました。
2013年、地元のファイバーフェスティバルで初めてセルフ・ストライピングの靴下糸を販売した後、2014年に、ショールのために開発したセルフ・ストライピング糸を発表しました。
熱狂的に受け入れられた糸
ただ三角に編めば、間隔の揃ったきれいなストライプのできる「ショール・ストライプ」糸は、地元のフェスティバルでニッターのコミュニティに熱狂的に受け入れられました。
今ではストライプの種類もいろいろ増え、ショールとお揃いにできるセルフ・ストライピングの靴下糸もあります。作るのに手間がかかるので、彼女の糸の生産量は多くはありません。でも、一度はそんな糸で編んでみたくなりませんか?
ウール80%・ナイロン20%
1カセ約170g / 599m
棒針3.5-4.0mm