こんにちは。編み物の妖精です。
こちらは編み物マニアから初心者さんまで気になりそうな本をピックアップして独断と偏見で紹介するコーナーです。
今回は…
『秋冬の糸で編む 機械の模様編』
98ページ 1987年刊 980円(当時販売価格)
いまだ一部の機械編み愛好家から問い合わせをいただくことがある、機械編みの模様集。機械編みというのは、当時「家庭機」とも呼ばれ、一家に一台あったのでは?と思うほど大流行した編み機を使って編む方法です。ちなみに私の実家にも3台ほど眠っています…。
基本、針と針の間が4.5mmピッチの普通機とも呼ばれる機械を使って編むのですが、これがとても画期的。手編みができなくとも、糸をかけ、キャリッジと呼ばれるハンドル付きの可動部分を左右に動かすことにより、機械本体に内蔵したベラ針が選針され、誰でも編むことができるのです。
手編みをしてから家庭機をやると1段を編むスピードに愕然とするものです。キャリジを端から端まで動かすだけの約1秒、これで1段が編めるのですから。もちろん目はきれい、細い糸も使えるとあって、今でも十分にポテンシャルのある編み物だと信じています。
そんな機械編みを支えていた模様集のひとつがこちら。透かし模様、編み込み模様、地模様、スレッド模様、引き上げ編み、すべり目模様を紹介しています。機械編み独自の模様などもあり、今読んでもとても興味深いのです。
機械編みの模様集の最大の特徴は、記号図が「裏から見た記号図」であるということ。というのも機械編みは構造上、裏側を見て操作をしていきます。手編みの記号図とは反対側に1模様の構成倍数が記載されていたりと、ちょっと違うところが面白い。
実際の操作も手編みと比べ非常にカンタンです。例えば「右上2目一度」の場合、右にある目を「うつし」と呼ばれる道具を使い左の目にかけるだけ。記号図通りに操作すればよいのです。
機械特有の模様として特筆すべきは「スレッド模様」でしょうか。スレッドはベースを編みつつ、もう一本の糸を編まずに渡していくことができます。選針により、その渡した糸で模様を作っていくのです。糸の風合いを生かすこともできますし、独自の模様が生まれるため、個人的にも大好きな技法です。
パラパラとページをめくるたびに、機械編みをやりたい気持ちがムクムクと沸き上がってきます。またあの機械の時代がこないかな?と妄想が広がる一冊です。