

毎年恒例になっているニットデザイン科2・3年合同の展示会を開催しました。
前回はニットを学び始めて3か月の2年生の作品を紹介しました。今回は3年生の作品を紹介します。
3年生のカリキュラムでは4月から、丸ヨークのプルオーバーとカットソージャケットを制作しました。
丸ヨークのプルオーバーはオリジナルの柄を考えることから始まります。同時進行でコンピュータニットを使って編んだ編み地でジャケットも制作していきます。
2年時に基礎を学んだ3年生の作品は、ニットの特性を生かした自由なデザインが多くなっていくのが注目すべき点です。
佐藤花衣さん(3年)の「Feel the Contest 2025」にも出店した作品。イタリアの国際的なコンテストで、世界中から選ばれたセミファイナリストに選ばれ、イタリアのヤーンメーカーと協業しながらミニコレクション差作品1体を制作しました。
佐藤花衣(3年)
宮本康平さん(3年)の作品のコンセプトは…
We can understand each other(私たちは分かり合うことができる)
「国や言語が違っていて離れた所にいても、私たちは繋がっていて皆心の奥で平和を願っている」というテーマを掲げて制作しました。 国や宗教によって様々な考え方がありますが、どれも本質は愛や平和。そこを自分なりに作品に昇華させました。 インターシャ部分にはサンスクリット語で調和、平和、穏やかなどの意味を持つ記号を入れています。
ヨーク部分は抽象化させた花をベースにしてカラフルに仕上がるように。実際に編んでみると想像より手間がかかった点が学びになりました。洋裁と違い、「編み」はゼロから形にできる点が魅力。 糸を混ぜて編んだり、増減させたり様々な技法を駆使して複雑な表現もできるので自由で奥が深い。電気を使わず、道具だけあれば気軽に編める点も素敵です」
宮本康平(3年)
さまざまな思いをニットに託して編み、それが形になると嬉しいですね。
こちらの2点は後藤もこさん(3年)によるもの。手編みの丸ヨークプルオーバーとコンピュータニットで編んだカットソージャケット両方に同じ「アリ」の模様が入っていいます。
「アリなどの虫に苦手意識がありましたが、逆に興味を持つようにし、かわいく作品に取り入れることで何か面白いものが作れるかもと思い、テーマにしました。コンピュータニットでの作品制作は初めてだったので、データの制作やリンキングでの縫製が難しく、苦労しました。ニットの好きなところは完成した時の達成感と、自分が夢中になれるところです」
後藤もこ(3年)
篠田彩綾さん(3年)は「ポンチョ」をテーマに制作。
「少しオーバーサイズに作図をして、センターにスリットを入れたりするなど、編み方以外にもシルエットで自分なりのテーマを表現しました。機械編みと棒針編みの異なるゲージを一つの作品にまとめる作業が大変で、特にヨークの拾い目では、編み地の伸縮性や厚みに差が出るため、輪針での拾い目の数を細かく調整しながら自然になるよう工夫しました。計算だけでは解決できない部分も多く、実際に編んでは解いての繰り返しで、ようやく理想のシルエットにたどり着きました。
ニットのいちばん好きなところは、どんなデザインにも応えてくれる懐の深さです。ふんわりやさしい表情も、シャープで構築的な形も、すべて編み方と糸次第。自由にデザインできるからこそ、何度作っても飽きることがありません」
左/篠田 彩綾(3年)、右/佐藤野乃(3年)
最後にこちらは丸ヨークのみの写真ですが、よく見ると!佐藤野乃さん(3年)のヨーク部分です。
「苦労したのはドクロと十字架の大きさを揃えるのを、何回か編んで調整したところ。身頃とヨーク部分をそれぞれ家庭機と棒針でやったので、編み目が変わらないように気をつけて編みました。ヨーク部分との境目が、自分でもびっくりするくらい綺麗にできたのですごく嬉しかったです。ベースの色と配色糸の風合いが似た感じになる様に糸を選んだので、色合いも込みですべて気に入っています」
佐藤野乃(3年)
伝統ニットの象徴ともいえる丸ヨークにドクロ柄。学生の自由な感性が羨ましいです。記号が読めて・書けて・編めて、そしてデザインができる。ニットデザイン科が目指すニットの形です。
素材を知り、自由自在に技法を駆使できるようになると、ニットは俄然面白くなるのではないでしょうか。
今回の3年生にコメントを求めたところ、皆さん多くを語ってくれました。ニットが好きだからずっと語っていられる。
なんだかわかる気がします。
文化服装学院
YouTube文化服装学院公式チャンネル
https://www.youtube.com/user/bfcstaff
bunka_fc(文化服装学院)
bunka_kd_official(ニットデザイン科)
文化服装学院 ニットデザイン科専任教授。文化服装学院ファッション工科専門課程ニットデザイン科。編物科・ニッティング科・産業ニットデザイン科と時代とともに名称を変え、ニット業界を支える人材を長年輩出しています。そのニットデザイン科学生達の奮闘を講師目線でお届けします。
https://www.bunka-fc.ac.jp



