いまや当たり前になりつつある、編み物に関わる男性にスポットを当てた過去毛糸だまの人気特集をピックアップ!
「2019年毛糸だま春号」より
今回の編み物男子は、人気声優の竹内良太さん。魅惑の低音ボイスでアニメ『ハイキュー! !』の牛島若利役をはじめ、ゲームや洋画の吹替え、スポーツ系ドキュメンタリーのナレーションなど幅広く活躍しています。
編み物を始めたのは、小学生の時のこと。
「当時、女子の間で編み物が流行っていて、あの…お近づきになりたいなと(笑)。ただ、僕がマスターした頃には女子のブームは終わっていて、初恋の人に手編みのマフラーをあげたら、引かれてしまいまして。なかなか切ない思い出があります(笑)」
その後、中学校の部活や声優を目指すことで中断していた編み物。再開のきっかけは「ØGauge」の活動でした。
「ØGauge」とは竹内さんが奥様で声優の寺島愛さん、その弟さんでプログラマーの寺島博樹さんと組んでいるユニット。
定期的にライブを行っていて、ファンの人たちに向けて販売するライブグッズとして、アクセサリーやスヌードなどの編み物作品を制作するようになったのです。
「ライブ後のグッズ販売で、ファンの皆さんとお話する時間を2時間ぐらい設けています。ネット販売もしていて、サイトに上げるとすぐに皆さんが買ってくださるので、ここでお見せできる作品がほとんどないんですよ」
今、販売しているのは、ラップブレスと編み物グッズがメイン。作風もどんどん変化しているそうですが、「作品もですが、僕自身も以前はこういう感じではなかったんです」という竹内さん。変化の発端は、21歳の頃、愛さんとの出会いにさかのぼります。
「愛は声優学校の先輩で、当時は "愛さん"と呼んでいました(笑)。その頃の僕は角刈りに某量販店のフリース、ヒゲ・ピアスなし。音楽も爽やか系を聴いている地方出身の健やか男子でした(笑)。愛はビジュアル系の音楽が好きで、彼女のファッションや価値観が僕にとっては新鮮で。その影響でヒゲ・ロン毛(長髪)・今のファッションにしたら、そういう役のお仕事が増えましたから、本当にトップブリーダーですよね(笑)」
ブリーダー!? 実際、「ØGauge」のグッズ作りにおいても愛さんは名プロデューサー。そんな奥様の意見を伺ってみると、
「私が販売価格を抑えられるように素材を選んで、彼が実際に制作する側です。ファンの皆さんはずっと待ってくださっているのに、彼の方が心が女子なので、色や形を決めるのにものすごく時間をかけるんですよ(笑)」
男らしい役柄の多い竹内さんですが、意識しないと作品がピンク色になってしまう、 可愛いもの好き。奥様の買物に付き合って女性の洋服屋さんに行くのも楽しいそうです。
「男ひとりじゃ行かない場所ですよね(笑)。妻に付き合うという名目で、僕自身が楽しんでいます。女性の服は色合わせが本当にきれいで、作品作りの色合いの参考になるんです」
ピンクと並んで好きなのが、小さいものを編むこと。ますます見た目とギャップが…。
「僕、パワフルなのか(笑)、編んでいると編み目がきつくなって、柔らかい糸でもガチガチに硬くなるんです。細かい作品はその硬さも生かせるし、単純に小さいものを編むのが楽しくて。今後は細かさの中に繊細なデザインのある作品を目指したいですね」
声優のお仕事、グッズ作り、奥様やファンの人たちとのつながり。竹内さんの大事なことが編み物でつながっているのが素敵です。3匹の愛猫たちも、毛糸遊びで参加してくれるそう。すべてが好循環で進化していく独自の作品作り。今後の展開が楽しみです。
プロフィール
竹内良太:たけうちりょうた
兵庫県出身。声優、ナレーター。渋めの低音ボイスが特徴で、アニメ、ゲーム、洋画の吹き替え、ドキュメンタリーのナレーションなど幅広く活躍している。編み物は小学生の頃から始め、ハンドメイドユニット「Studio ØGauge」としても活動中。多忙な中、小物やアクセサリー作りに励んでいる。猫、ピンク好き。
Twitter @takeuti_ryota
Minne StudioØGauge
photograph Bunsaku Nakagawa